しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

彼岸入りを前にして

彼岸の入りを明日に控え、今日はお墓掃除に行ってきました。

お墓は自転車で10分以内の至近距離にあるのに、お墓に行くのはお正月以来でした。

母をはじめ、ご先祖様、ゴメンナサイ‥‥。

枯れ葉を拾い集め、シキビ(こちらではシキミをシキビと呼びます)を新しいのに取り換え、

お供えのお茶碗のお水を入れ替えると、こちらの心まで清められる感じがするのが、

不思議といえば不思議です。


ところで、昨日の「NIKKEI プラス1」の「くらし物語」には、お墓の特集記事があって、

そもそものお墓の役割が、次のようにまとめられていました。

・残された人の心のよりどころ ・生きた証として ・遺骨の安置場所


ところが、従来の墓や仏壇に代わる新たな供養方法として、

故人の遺骨・遺灰を骨つぼに入れて自宅で供養したり、アクセサリーに納めたりする

「手元供養」が広がっているそうです。

その背景には、「イエ(家)意識の希薄化、核家族化、少子化の進展で葬儀や供養の多様化、

個人化の色彩が強まってきた」という、有識者の解説がありました。


娘と孫娘の時代には、我が家のお墓は維持できなくなると思います。

お墓がなくても時々思い出してくれれば、私は十分満足なのですが、

ご先祖様が眠るお墓の維持継承は、長男の私にとって、いくつもある懸案事項の一つになっています。

未来のために必要な過去

深夜から未明にかけて大荒れの天気となりました。

窓を打つ強い風と不気味な雷の音で何度も目が覚めました。春の嵐です‥‥。


さて、日経新聞の連載特集「平成の30年 陶酔のさきに」は、今日16日が最終回でした。

「日本人はどこへ行く」というテーマで、

ノンフィクション作家の梯久美子さんにインタビューした記事が掲載されていて、

そこには次のような印象深い記述がありました。


『未来への不透明感が増した一方で、平成は過去を顧みなくなった時代でもあります。

 死者の声を聞かなくなった時代です。

 あの戦争を含む日本人の過去を、昭和のころはまだしきりに振り返り、未来への教訓にしていたのですが、

 それが軽んじられている。

 このところ発覚した公文書のずさんな取り扱いや統計不正をみていると、

 終戦直後に機密書類を大量焼却したような過ちを反省していないなと痛感します。

 未来のために必要な過去を、今を乗り切るために切り捨てていませんか。

 そういう所作は、歴史を単純化して解釈する風潮ともつながっている。

 近現代史と取り組んでいると、どんな事象も複雑な内実を持っていることがわかります。

 ところが、多くの人々がその複雑さに耐えられない。短い、単純な言葉で語ろうとするのです。

 それで結局、徒党を組むときの陣地争いの手段としての歴史が幅をきかせる。

 教養を深めて、もっと歴史の複雑さに耐えたいものです。

 歴史の複雑さに向き合わないと、見方をあっけなく反転させてしまうことにもなります。』


う~む、なるほど‥‥。

平成は「過去を顧みなくなった時代」「死者の声を聞かなくなった時代」だったのですか‥‥。

ノンフィクション作家の梯さんのご指摘だけに重みがあります。

この記事を読んで、先日この日記に書いた、中島岳志さんの「生きている死者」を思い起こしました。

未来のために過去が必要でなんですね‥‥。心にしっかりと留めておきたいと思います。

最近、この歳になってようやく、自ら拠り所とする思想が見えてきたような気がしています。

気持と能力は別問題?

今日15日の日経新聞電子版「スグ効くニュース解説」は、

『時短正社員とは フルタイムとどう違う?』というタイトルで、編集委員の次のような解説がありました。


『正社員は「1日8時間勤務」、それより短いと派遣社員やアルバイトと思われがちですが、

 正社員がすべてフルタイム勤務というわけではありません。フルタイムの壁は崩れつつあります。

 子どもの都合で夕方遅くまで働けない。親の介護で長くは働けない。そんな人が増えているからです。

 企業もフルタイムにこだわると、優秀な人材を正社員として確保するのが難しくなってきました。

 そこで出てきたのが「時短正社員」です。

 働く人と会社が最初に短い労働時間で働くと決めることから「時短」と呼ばれます。

 すでに雇用されている社員が、子育てのために一時的に時短勤務する制度とは別で、

 こうした雇用形態が増えています。』


早いもので、私が定年退職をしてから3年が経過しようとしています。

この3年間、週5日のフルタイム勤務でなんとか踏ん張ってきましたが、

健康に自信がなく、家庭では父のもろもろの世話もあって、正直、しんどくなってきました。

そこで、職場にお願いして、この4月からは週4日勤務にしてもらうことにしました。

これも、一種の「時短」ですよね‥‥。ただ、仕事の内容はこれまでと全く変わりがありません、


そして、先ほどの記事には次のようなことも書かれてました。

『キャリアを積みながら家庭生活と仕事を両立できる‥‥。

 メリットは大きいのですが、決して甘い働き方ではありません。

 仕事が終わらず、家に持ち帰れば、時短の意味がなくなります。

 高く評価されるほど新しい仕事を頼まれますが、時短で働くからには、断る勇気も必要です。

 一方で「会議では必要なことしか話さず、雑談もしなくなった」という人もいます。

 だらだらと残業に陥らない時短正社員は「できる社員」ともいえます。』


はぃ、週5日勤務が週4日勤務になっても、「決して甘い働き方」はできないことは覚悟していて、

これまで以上に手際よく仕事を進めていかなくてはと思っています。

そうは言っても、この気持ちに能力がついてけないのが、私の最大の課題です。(苦笑)

他山の石

イギリスという伝統の国が混乱しています。

今日14日の朝日新聞一面コラム「天声人語」には、次のようなことが書かれていました。


エリザベス女王をロンドンから安全な所に避難させる。

 そんな秘密の計画があると英紙サンデー・タイムズが報じたのは先月のことだ。

 もしも英国が欧州連合(EU)から「合意なき離脱」をした場合、

 社会の混乱もありうると見ての対策という。

 今や英国政治のキーワードとなった「合意なき離脱」は、

 出入国管理や関税などの協定が作れないままEUを抜けることだ。

 2年半前の国民投票でEU離脱を決めたものの、どんな協定にすべきか、

 英議会の話し合いが一向にまとまらないのだ。

 このままでは生活必需品の輸入が途絶える、との懸念が報じられる。

 トイレットペーパーが店頭から消えるのでは、との声もある。

 やや大げさとも思えるが、混乱を避けたいがゆえの警告だろう。

     ~ (中略) ~

 1950年刊の笠(りゅう)信太郎著『ものの見方について』が英国の知識のあり方を論じている。

 1人の優秀な頭脳が生み出すのではなく、たくさんの平凡な頭脳が寄り合って作るものだと。

 そんな「話し合い」の力量は今の英国政治からなかなか見えてこない。~ (以下、略) ~ 』


う~む‥‥。「トイレットペーパーが店頭から消える」だなんて、

まるで昭和48年の、日本の第一次オイルショックを思い起こさせます。

いゃあ~それにしても、議会制民主主義のお手本のような国・イギリスが、

どうしてこんなことになってしまったのでしょう‥‥?

素人の私の目から見ても、今のイギリス議会で合意形成が図れるとはとても思えません。


それもこれも、今から思えば、2年半前の国民投票に遠因があるような、ないような‥‥。

今回の件で、多数の意見というのは、

「必ずしも良い結果をもたらすではない」ということがよく分かりました。

でも、そうであるならば、今回の件は、どのような解決の方策があるのでしょう?

不謹慎かもしれませんが、現代政治学の格好の研究材料になるかもしれません。


日本もイギリスを「他山の石」として、肝に銘じなければならないと思いました。

希望の匂いがする

今日13日の朝日新聞一面コラム「折々のことば」は、

民族学者・赤坂憲雄さんの『歌って、怖いよね。本気にさせちゃうし。』という言葉で、

いつものように、鷲田清一さんの次のような解説がありました。


『歌は人のこころを揺さぶる。こころの底に溜(た)まった澱(おり)を洗い流してもくれる。

  みなで歌えば気分はさらに高揚する。

 歌は人の思いを過剰なまでに煽(あお)り、結びつけることもあれば、

 人びとの「抵抗」の最後のかたちともなりうる。その揺れ幅が怖いと、民俗学者は言う。

 昨日、一昨日と同じ詩人・和合亮一、アートプロデューサー・相馬千秋との鼎談

 (ていだん、「現代詩手帖〈てちょう〉」3月号)から。』


う~む‥‥。歌って、そんなに怖いものなのでしょうか‥‥。

そういえば、昨日、自分の考えがまとまらないままこの日記を書き終えた後、

なにげなく口ずさんでいたのは、和田アキ子さんの『あの鐘を鳴らすのはあなた』でした。

♬ あなたに逢えてよかった あなたには希望の匂いがする

  つまずいて 傷ついて 泣き叫んでも さわやかな希望の匂いがする
  ‥‥
  あなたに逢えてよかった 愛しあう心が戻ってくる

  やさしさや いたわりや ふれあうことを 信じたい心が戻ってくる

  町は今 砂漠の中 あの鐘を鳴らすのはあなた

  人はみな孤独の中 あの鐘を鳴らすのはあなた

  町は今 眠りの中 あの鐘を鳴らすのはあなた

  人はみな悩みの中 あの鐘を鳴らすのはあなた


この歌詞を創られたのは、あの阿久悠さんです。

阿久悠さんはこの歌詞を、どのような時代認識を持って創られたのでしょうか‥?

この国と私たちの行く末を、すでに見通されていたのかもしれません‥‥。


ちなみに私は、この歌詞の中では、「さわやかな希望の匂いがする」という言葉が大好きです。