「官僚制批判の論理と心理」(野口雅弘著、中公新書)を読了しました。
読み応えのある本でした。一読をお薦めします。
アマゾンの商品紹介では、
「福祉社会が志向される一方、行政への不信が蔓延するパラドックス。
官僚制と戦う強いリーダーの待望と対峙する鋭利な政治思想史」
と書かれていますが、
著者は本の結語に、「テーゼ」という形で内容を簡潔に要約されています。
【テーゼ1】
官僚制に対する批判的な情念は普遍的である。
【テーゼ2】
官僚制はデモクラシーの条件でもある。
【テーゼ3】
正当性への問いは新自由主義によって絡め取られやすい。
【テーゼ4】
ポスト「鉄の檻」状況において、強いリーダーシップへの要求には注意が必要である。
【テーゼ5】
ウェーバーの官僚制論は今日、新自由主義への防波堤として読むことができる。
例によって私は、参考になった部分をメモ帳に書き写しましたが、
今日はその中でも次の文章をこの日記に載せ、記憶に留めたいと思います。
『近年の政治家には「政治哲学」がないとか、
芯がないのでブレてしまって情けないとの嘆きを聞くことがあるし、
その通りかもしれないと思うこともある。
しかし、政治家には芯が通った信念が必要だという一般論的な願望が、
今日の状況においては、官僚や官僚制を批判し、
「小さな政府」を唱える新自由主義にきわめて有利に働くことも
見逃されてはならない。そうではない立場をとろうとすると、財源の問題に直面せざるをえず、
またわかりやすい「公平性」では割り切れない、
さまざまな「介入」に対して説明が求められ、
試行錯誤を繰り返さざるをえないという傾向にある。』
官僚制批判の論理と心理 - デモクラシーの友と敵 (2011-09-25T00:00:00.000)
- 作者: 野口雅弘
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2011/09/22
- メディア: 新書
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