しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

感情論の時代

米国在住の作家、冷泉彰彦氏が、
12月10日付の「from911/USAレポート」で、
2011年の日本を一言で総括するならば、
「感情論の時代」と言えるのではと、次のように述べられています。
『震災直後の自粛、放射性物質の危険性論議、TPPと農業開放の問題、そして大阪の乱と、
多くの社会的な現象がどう考えても合理的な思考というよりも、
直感的あるいは情緒的な感情論によって形成された世論が大きな力をもった、
そんな一年であるように思います。』
 
そして、感情論を否定するのは不可能としたうえで、
間接民主制の下、実現可能性のある選択肢がどんどん狭まって行く時代の中で、
その時々の選択、その時々のコミュニケーションにおいて、
どう最善手に近い判断を続けることができるかにかかっているのかもしれない、
と述べられています。

次に、具体的な「感情論」に対しての対処として、
第一は、感情論が肥大化するときには大きな理由があるということ。
第二は、感情論を認めること。
第三には、感情論を「正論」で押しつぶさないこと。
の三点が必要と指摘されています。

レポートの最後の部分は、次のように締めくくられています。
『今年という年は、
政治の成熟の方向性が問われ始めた年、
世論の持つ感情と政策の実現可能性の乖離を
社会が意識し始めた年として位置づけたいように思うのです。
震災と原発事故により、生存することそのものへの不安を抱え込んだ日本、
財政破綻に対して実現可能な相互扶助と共同体の維持へ向けて
大変な政治プロセスを踏んだ欧州、
そのどちらにとっても、経験自体は大変な痛苦であったわけですが、
人類のかつて経験しなかったような忍耐と、
知的な作業を貫いたのは間違いないように思います
。』

12月3日付の「在日米軍」を書いたレポートに引き続き、
今回も秀逸のレポートで、大変勉強になりました。一読をお薦めします。
レポートでも指摘されているように、
ここまで困難な状況であるにも関わらず、
とりあえずヨーロッパも日本も平静であることを
私たちは評価し、そして感謝しなければならないのかもしれません。