しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

教養主義の没落

今では古い本の部類に入ったかもしれませんが、
教養主義の没落〜変わりゆくエリート学生文化〜」(竹内洋著:中公新書)を読了しました。
着眼点が大変ユニークというか独創的で、
読んでいて「なるほど!」と思うような箇所や
向老世代の私にとって、ある意味ノスタルジーを感じる箇所がいくつもありました。

本の最後の方の部分で、私の目に留まった箇所は、
通産大臣衆議院議長を務めた前尾繁三郎の次の言葉です。
「学生時代(第一高等学校)から50年経った。
いまとなってはすっかりドイツ語は忘れてしまった。
哲学概論も冒頭の文章以外覚えていない。
しかし、学問に対する尊厳とそれに挑む気魄というようなものが、
知らず知らずの中(うち)に培われ、
私のその後の人間形成にどのくらい役立ったかは測り知れない。

そして著者は、最後に次のように結びます。
『大正教養主義はたしかに書籍や総合雑誌などの印刷媒体とともに花開いたが、
それとともに忘れてはならないのは、
前尾繁三郎や木川田一隆(元東京電力会長)にみることができるように、
教師や友人などの人的媒体を介しながら培われたものであったことである。
戦後の大衆教養主義は、
こうした教養の人的媒体をいちじるしく希薄化させたのではなかろうか。
教養の培われる場としての対面的人格関係は、
これからの教養を考えるうえで大切にしたい視点である。
教養教育を含めて新しい時代の教養を考えることは、
人間における矜持と高貴さ、
文化における自省と超越機能の回復の道の探索であることを強調して、
結びとしたい。

是非一読をお薦めします。

教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化 (中公新書)

教養主義の没落―変わりゆくエリート学生文化 (中公新書)