日経新聞経済教室「危機に克つ」シリーズの第3回目は、
藤本隆宏東京大学教授の「世界競争、本社は覚醒せよ」でした。
掲載記事の「ポイント」欄にも書かれているように、
技術・生産管理の専門家である筆者の主張は、次の三点に要約されます。
・過剰な悲観論は意思決定者の思考鈍らせる
・円高による「空洞化不可避論」は論理性欠く
・生産・開発とも国内外の「二本足経営」重要
この中で、私が「なるほどなぁ」と納得したのは。
一番目の「過剰な悲観論は意思決定者の思考鈍らせる」です。
『東日本大震災、原発事故、世界経済不安、超円高など
2011年の日本を暗澹たる空気が覆った。
こうした波状的危機は、
一方で人々の連帯を促し、世界を驚かす迅速な産業復旧に結実した。
だが異常事態はまた、企業や国の意思決定者に危険な精神状況を生みもする。
過剰な悲観論は思考を鈍らせ、心理が論理に勝ち、
直言は抑圧され、熟慮より空気が会議を支配する。
〜(中略)〜
組織内外の曖昧な空気の相互作用が大きな判断ミスを生む傾向は、過去にもあった。
今怖いのは次の天災や超円高よりも、
事態に圧倒された意思決定者が心理戦に負け、
内向きの短期判断に走り結果的に自滅の道を選ぶことだ。敵はわれわれの心中にある。
産業界の今年は、この空気による迷いを打破し覚醒の年としなければならない。』
記事の中で、私が太字で強調した部分だけを読むと、
産業界だけでなく、国や地方公共団体の組織にも当てはまるのではないかと思いました。
また、この内容は、
「失敗の本質〜日本軍の組織的研究〜」(中公文庫)や
「空気の研究」(文春文庫)
といった名著の存在も思い出させてくれます。