1月27日付けの「溜池通信」の特集は、
「日本経済4つの論点〜欧州、貿易、復興、消費税」でした。
双日総合研究所の吉崎達彦さんこと「かんべえ」さんは、
2012年の日本経済を展望する上で、
主要な論点は以下の四つと指摘されています。
① 欧州経済:欧州債務危機が世界に与える影響
② 貿易収支:31 年ぶりの貿易赤字が物語るもの
③ 復興需要:「3/11」震災からの復興への課題
④ 消費税:増税論議と実務的な問題
この中でも、④の消費税については、
1989年4月の制度導入時、当時の竹下首相は国会答弁で、
「消費税には6つの懸念がある」と述べているとして、次のとおり紹介されています。
第1の懸念=逆進的な税体系となり、所得再分配機能を弱めるのではないか。
第2の懸念=中堅所得者の税の不公平感を加速するのではないか。
第3 の懸念=所得税のかからない人たちに、過重な負担を強いることになるのではないか。
第4の懸念=税率の引き上げが容易に行われるのではないか。
第5の懸念=事業者の事務負担が極端に重くなるのではないか。
第6の懸念=物価を引き上げ、インフレを招くのではないか。
さらに「かんべえ」さんは、
平成版6つの懸念を次のとおり提示されています。
第7の懸念=税率を上げた瞬間に生じる駆け込み需要と反動減による歪みをどうするか。
第8の懸念=欧州債務危機などにより、急速に景気が冷え込んだ場合にどう対応するか。
第9の懸念=エネルギーや自動車などの二重課税を見直すべきではないか。
第10の懸念=公共交通や医療サービスには軽減税率が必要ではないか。
第11の懸念=震災被災地の復興に影響が出るのではないか
第12の懸念=税率の上げ幅とスピードはどの程度が適当か。
消費税の論点をこれほど見事に整理されていることに脱帽します。
本来は、政府・与党がこうした論点というか、懸念材料を国民に示すとともに、
国会においても政局抜きで議論をすべきと思うのですが、
どうしても現状は「先に増税率と増税時期ありき」になっているような気がします。
「かんべえ」さんが指摘されているように、
今回の増税に当たっても、第1(逆進性)と第3(低所得者負担)の懸念が
論点の中心になると思います。
私は個人的には、軽減税率の適用といった複雑な手段ではなく、
別途、社会保障の分野で厚く手当をするべきではないかと思っています。