14日(水)の日経新聞「経済教室」は、
池尾和人慶応大学教授の『「時間稼ぐ」効果、過信は禁物』でした。
金融論について素人の私にとって、基礎的なことを学ぶ良い機会になりました。
以下、その内容を備忘録的にメモとして残しておこうと思います。
・日本経済がその実力から下振れているとすれば、
それを解消することは、マクロ安定化施策としての金融政策の役割。
しかし、潜在成長率(潜在GDPの伸び率)を引き上げることは本来、
金融政策の守備範囲を超えるものである。
・FRBのバーナンキ議長も
「長期における頑健な経済成長を支える経済政策のほとんどは、
中央銀行の所管外にある」と述べている。
う〜ん、このあたりは「日銀の見解」を読んでいるみたいです。
・経済全体でみた労働生産性の上昇要因としては、次の3つが考えられる。
①経済学者が全要素生産性の上昇と呼ぶイノベーションの成果
②資本整備率(労働者1人あたりで使える資本設備)の引き上げ
③労働生産性の上昇率の低い産業から高い産業への労働力移動
・労働市場改革など成長的な取り組みは地道な努力が必要
・金融緩和の強化が「時間を稼ぐ」というメリットももたらすとしても、
それは無コストで得られるものではない。
一段の金融緩和の強化に伴う副作用にも留意する必要
・現状の金融緩和策には、国債消化と安定保有を促進する政策として
もっぱら機能しているという懸念が伴う。
・結果的に民間貯蓄を投資にではなく、
財政赤字の穴埋めに振り向けることになっているとすれば、資本蓄積をスポイルするもの。
資本蓄積が進まなければ、資本装備率を引き上げて、
労働生産性を上昇させることはできない。
記事の最後で、池尾教授は重要な指摘をされています。
『金融緩和で時間を稼いでいる間に日本経済の実力そのものの改善が実現できず、
結果として再び経済状況が悪化すると、
再度「時間を稼ぐ」ように中央銀行への政治的圧力が強まりかねない。
こうした不幸な循環は、何としても断ち切らなければならない。』
中央銀行の「独立性」が必要なことが、なんとなく理解できたような気がします。
なお、池尾教授の著作には、「現代の金融入門」という良書があります。
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