「高校紛争1969-1970〜闘争の歴史と証言」(小林哲夫著:中公新書)を読了しました。
この本は、著者が「まえがき」で書かれているように、
高校紛争(高校生による学生運動)はなぜ起こったのか、だれが起こしたのか、
どのような形で広がったのか、どのようにして解決したか、
そして、高校はどう変わったか、今日の高校教育制度にどのような影響を与えたか、
などの解明を試みたもので、紛争当時の資料や関係者の証言を丹念に収集し、
「忘れられた歴史」の発掘、検証を行っている価値の高い労作です。
2012年現在、1969年の紛争ピーク時の高校三年生は還暦を迎えていますが、
高校紛争は、高校生という成長過程における「多感」、
ベトナム戦争や大学紛争という「時代」によって生まれたと著者は指摘しています。
そして、本の最後は、次の文章で締めくくられています。
『むやみに今日的評価は求めない。しかし学校関係者が教育問題で行き詰ったとき、
高校紛争で高校生が提起したこと、それに対して教師が応えたことを思い起こしてほしい。
たとえば、大学受験一辺倒の現在の風潮がいいのか。
若者論、学校論に取り組むとき、高校紛争を参考にしてほしい。
現在の高校教育における難問を解くヒントが見つかるはずである。』
1969年の高校紛争に関わった世代は、私より3〜4歳上の方なので、
身近な存在で親近感があり、この本を読んでいても、
不謹慎な言い方かもしれませんが、何故か懐かしい気持ちになりました。
確かに、あの当時の先輩方は、
「自分たちの力で体制は変えられるかもしれない。いや、変えなければならない。」
という思考や行動様式を持っていたと思います。
「それに引き換え、今の高校生は……」
などと、傲慢不遜な指摘をするつもりは私には全くありません。
「それぞれの時代には、それぞれの困難がある」ことが
この歳になって、ようやく分かってきたような気がしていますから……。
若い方に是非読んでもらいたい一冊です。
高校紛争 1969-1970 - 「闘争」の歴史と証言 (中公新書)
- 作者: 小林哲夫
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2012/02/24
- メディア: 新書
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