しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

「価値」に関わる問題

昨日(23日)の地元愛媛新聞に、佐伯啓思京都大学大学院教授の
「TPPめぐる価値の対立〜競争か社会の安定か」という論考が掲載されていました。

佐伯教授といえば、この日記でも紹介した
「日本の宿命」や「反・幸福論」(いずれも新潮新書)の著者で、
保守の論客のお一人と、私は理解しています。

この論考で佐伯教授は、
『TPPは規模の大きさと影響力からすると
 日本の場合、米国との攻防が決定的な役割を果たすが、
 私には、この攻防の焦点は、双方の「利」に関わるというより、
 両国の「価値」に関わる問題だと思われる。』と述べられています。

では、両国の「価値」とはなにか?佐伯教授の説明を私なりに要約してみます。

米国の場合は、
もともと個人主義能力主義、競争主義という価値を強く信奉しており、
こと経済については、
個人が自由に競争して自己利益をめざすことで、
結果として効率性が高まり、経済成長が可能になるという市場競争主義の立場。

これに対し、経済にはもう一つの見方がある。

その見方とは、経済は一方で競争によって効率性を達成すると同時に、
他方では社会生活の安定性を確保するものであって、
市場競争原理は、必ずしも労働や資本という「生産要素」や
食料や医療という「生活関連財」には及ばないとするもので、
重要なのは、個人の能力の発揮よりも社会の安定であり、
人々がつくりだす組織や地域であり、全体的な平等性の確保にあるとう考え方。
明らかに日本の価値観はこれに近い。

佐伯教授は、以上のように述べられたうえで、
『TPPも煎じつめると、経済をめぐるこの二つの価値観の対立であり、
 どちらを取るかという対立とみるべきである。』と指摘されています。

う〜ん、相変わらず奥が深いですよね。
TPPに関する佐伯教授の考え方と、
一昨日のこの日記で書いた、規制改革に関する太田教授の考え方との違いを
どのように理解すればよいのでしょうか?

英語の「エコノミー」は節約や効率化を意味するのに対して、
日本語の「経済」は「経世済民」であるとの佐伯教授の解説を読むにつけ、
何が良くて何が悪いのか、私にはさっぱり分からなくなります。

全く話は変わりますが、佐伯教授には、
「経済学の犯罪」(講談社現代新書)という過激なタイトルの著書もあります。
御参考までに…。

ちなみに私自身は、
高度成長時代の日本とはいかないまでも、
今の日本がこれでよしとすることなく、持続的な経済成長を目指すべきという立場です。