しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

「機を熟するのを待つ」ということ

安倍首相がフェイスブック上で
外務審議官を務めた田中均氏に批判を加えた件に関して、
雪斎先生こと、櫻田淳・東洋学園大学教授が、
昨日(2日)の産経新聞「正論」に、論評を投稿されていました。
論評のタイトルは、『「右傾化」で外交をくくるなかれ』でした。

この論評の中で雪斎先生は、
安倍首相と田中均氏との応酬は、
フェイスブックを含むさまざまな手段によって容易になった
 政治家の「発言」の意味について考える機会を提供した」と述べられたうえで、
今回の応酬で留意すべきは、
『安倍首相の政治姿勢に「保守化」や「右傾化」という類いの安直なラベルを貼って
 何か説明したかのように勘違いする空気が、いかに根強いかということだ。』
と指摘されています。

私には、
安倍首相と田中氏の、それぞれの発言の「問題」がどこにあるのか、
前後の脈略が不明・不知なのと、私の能力不足から、イマイチ理解できていません。

雪斎先生が、
『田中氏が安倍首相の対外政策運営に示した「懸念」には総じて同意する。』
と述べられていることから考えても、
田中氏の懸念は、ごくごく「普通」の発言であるように思われます。

むしろ安倍首相の、「彼に外交語る資格なし」発言の「真意」がよく分かりません。
これは、田中氏が「北朝鮮との交渉記録を一部残していない」ことを指すのではないか、
との報道もあります。

そのことはともかくとして、
雪斎先生の論評で、次の2つの指摘がとても勉強になりました。
果たして、普段は「待てない」私たち国民が、
対外政策で「機を熟するのを待つ」ことができるのでしょうか?
ちょっと心配です。

『そもそも、対外政策を語る際、「右」とか「左」とか、
 「保守」とか「革新」とかという語法を用いるくらい、
 相応(ふさわ)しくないものはない。
 問われるのは、日本の「国益」の要請と現実の国際環境の制約とに照らし合わせて、
 どの国々の関係に優先順位を置くかという政策判断の是非でしかない。』

『民主主義体制は、
 政治家に対して早々の成果を要求する意味において「待てない」政治制度である。
 しかし、対外政策は本質的に「機が熟するのを待つ」ことを求められる政策領域である。
 対中関係の膠着局面の打開は、先々には模索すべきものであるとはいえ、
 それを急いで進めることが自己目的化していいはずはない。
 問われるのは「機が熟するのを待つ」判断の鋭さや確かさであろう。』