しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

「議論の迷走」か「熟慮断行」か

先週11日(金)の日経新聞「経済教室」は、
国枝繁樹・一橋大学准教授の『消費増税後の課題㊦〜「慎重」見通しで財政再建を』でした。

この論考で国枝准教授は、
今回の消費税増税の決定過程においては、「議論が迷走」したと述べられています。
そして、迷走の背景には、
『信頼に足る財政再建計画の着実な実施が、
 安倍晋三首相の経済政策「アベノミクス」成功の前提』
という認識の欠如があるように思われると指摘されています。

「認識の欠如」の「認識」とは、具体的には次のような内容です。
アベノミクスの第一の矢である大胆な金融緩和は、
 財政再建がなければ財政赤字マネタイゼーション(日銀のいう財政ファイナンス)
 とみなされ、長期金利の不安定化を招く。
 第二の矢である機動的な財政政策は、
 将来の確実な財政再建の見通しがなければむしろ経済に悪影響を及ぼしうる。
 第三の矢である成長戦略についても
 「財政を犠牲にしても競争力向上を」という主張は通用しない。』

国枝准教授は「議論の迷走」と述べられていますが、私にはちょっと違和感がありました。
むしろ、「かんべえ」さんが、同日付けの「溜池通信」で述べられているように、
『「熟慮断行」というか、「準備万端」というか、
 手続きを尽くした末の最終決定であった。』という表現の方が
今回に関しては、的を射ているような気がします。

同じ論考の中では、「投資減税」に関する次の説明が大変勉強になりました。
『最近の非伝統的財政政策の理論は投資減税がデフレ脱却のために望ましいとしており、
 今回の経済対策パッケージに積極的な投資減税が含まれるのは適切である。
 他方、実際に投資をする企業のみならず、
 内部留保を蓄積するだけの企業にも恩恵がある単なる法人税率の引き下げは、
 同一額の財源を前提とした場合、投資減税よりも投資刺激効果が小さいことが
 ローレンス・サマーズ・米ハーバード大学教授の分析により知られている。
 財源が制約される下で、デフレ脱却までは、投資減税に政策を集中させることが望ましい。』

う〜ん、なるほど……。そういうものですか。
「復興特別法人税の廃止前倒し」が、なんとなく「筋悪」のように感じていたのは、
その恩恵が法人税を納付している企業一律に及ぶからなのでしょうか。
せっかく法人税を廃止しても、そのお金が内部留保に止まり、
設備投資から賃金上昇へと波及しなければほとんど政策の効果がありません。

「人々の期待のコントロールは容易ではない。」
国枝准教授のこの言葉は、とても説得力があると思いました。