しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

財政赤字と日本人の国民性

今月28日の日経新聞「核心」は、
平田育夫コラムニストの「国民性が傷める財政〜優しさと無責任が同居」でした。

平田さんは、
国際成人力調査において、日本人には理解度や底力があることが示されたのに、
日本の財政が国際的に突出して悪いのは、
予算をつくる政治家や人々の意識・態度など、その国民性を反映しているのではないか、
と指摘されています。

そして、古い日本人論を紹介しながら、
日本人の国民性を指摘されているのですが、これがとても勉強になりました。
そのいくつかを、この日記をメモ代わりにして残しておこうと思います。

①「政府の役割」を自分の問題として考えないことについて
 
 ・哲学者の和辻哲郎は、「議会政治がはなはだ滑稽なものであるのも、
  人々が公共の問題をおのが問題として関心しないため」と
  78年前の本「風土」で喝破した。
  和辻は、西洋で城壁内の生活を共同で守るため
  公共的なものへの関心が高まったのに対し、
  日本人は「家」の内部の生活を豊かにすることに集中すると論じた。

②「現世代には優しいが、国債のツケを払う後世代には冷たく、無責任だ。」
 財政赤字を増やす、日本人のこの二面性について

 ・日本人論の古典、ルース・ベネディクトの「菊と刀」は、
  人々が世評を最も気にして行動するという「恥の文化」説を問うた。
  この説に従うなら、誰も改革を強く言わないのは分かる。
  世間に疎まれ恥をかくのだ。
  だが子供や未来の国民は「世間」のうちに入らず、
  その目が気にならないから抵抗なく国債に頼る。
 ・精神医学者、土居健郎の「『甘え』の構造」によれば
  日本人の生活空間は3つの同心円からなる。
  内側は甘えのきく身内、次は遠慮が要る知人などだが
  「一番外側の見知らぬ他人に対しては一般に無視ないし無遠慮な態度がとられる」。

③「日本型社会主義」と呼ばれる、麗しい平等主義について

 ・平等主義を心理学者の河合隼雄は日本の「母性文化」から説明した。
  「母性原理に基づく倫理観は、
  母の膝という場の中に存在する子どもたちの絶対的平等に価値をおく」と論じた。
 ・人々の人生観から迫ってみよう。
  8世紀末編さんの「続日本紀」に中今(なかいま)という語が現れる。
  「過去と未来との真ん中の今。現在を賛美していう語」(広辞苑)である。
  思想史家の丸山真男はこの中今にも触れながら、
  過去や未来より「いま」を尊重する傾向を指摘。
  日本人の歴史的オプティミズム(楽観主義)とワンセットになっていると論じた。

まだまだ書き残したいのですが、今日はこれくらいにします。

論評の最後に平田さんは、
日本では高齢化や低成長、核家族化に加え、
独特の国民性が財政赤字に輪をかけている面があるのではないかと述べられたうえで、
「国民性を考えた政治が要る時代だ」と喝破されています。

ここで考え込んでしまいました。
財政赤字の要因が日本の独特の国民性にあるのだとすれば、
この解消は口で言うほど簡単ではないような気がします。
逆に、日本人には、財政赤字を解消できる、まだ別の国民性があると信じたいです。