しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

曖昧な制度を持つ超大国

今月25日(月)の日経新聞「経済教室」は、
加藤弘之神戸大学教授の
『岐路に立つ中国経済㊤〜「曖昧な制度」改革は困難』でした。

GDP規模で日本を抜いて世界第2位に躍進した中国。
これほどの成功を中国にもたらしたのは、
経済システムに見られる次の3つの特徴であると、加藤教授は述べられています。

第一の特徴は、権威主義的政府が経済運営に介入し、
国有企業が主導的な役割を果たす「国家資本主義
第二の特徴は、外資を含む民営企業が発展を牽引(けんいん)する「草の根資本主義」
第三の特徴は、地方政府間の激しい成長競争

加藤教授は、これら3つの特徴が
いずれも中国経済に高度成長をもたらした重要な要因であり、
地方政府の支援を受けながら、国有企業と民営企業はときに対立することはあっても、
併存し、競争しながらともに成長していったと考えられると述べられています。

しかし、このような中国の成功体験は一部の論者が賞賛するけれども、
以下に述べる「二重の罠(わな)」に直面して、
この発展モデルは転換を余儀なくされていると、加藤教授は指摘されています。

第一は中所得の罠
中所得国の発展レベルに到達した今日、
外国技術の模倣ではない独自技術の開発、
付加価値の高い製品構造への転換が進まなければ、経済は停滞に陥ってしまう。

第二には体制移行の罠
改革の目標が曖昧なまま徹底した市場化をしなかったため、
既得権を持つ利益集団が形成され、それが民営企業の健全な発展を阻害したり、
腐敗の元凶となったりしている。
さらに、環境問題や所得格差の拡大といった高度成長のひずみが、
大衆の不満を引き起こしている。

そして、いつ、どのような形で発展モデルの転換が実現されるかについては、
共産党指導部が「上からの改革」に乗り出すか、
共産党の外側に改革勢力が結集するか、
経済危機などの外部ショックが受動的な改革を引き起こすか、
大きく分けると3つのシナリオが考えられると述べられたうえで、
これらのシナリオの実現は困難を伴い、
「曖昧な制度」に特徴づけられる現行の経済システムは、
なおしばらく維持される可能性が大きいと、論考を結論付けられています。

う〜ん、参りました。
加藤教授の論考を簡潔にまとめるつもりでこの日記を書き始めましたが、
それでも結果的に、これだけの分量が必要でした。

ところで、論考を読む際の理解の手助けになったのが、
以前この日記でも紹介した
『岐路に立つ中国〜超大国を待つ7つの壁』(津上俊哉著:日本経済新聞出版社)です。

先日も、中国による沖縄県尖閣諸島を含む
東シナ海上空での「防空識別圏の設定」というニュースが報道されました。
岐路に立つ超大国・中国のお相手をするのは、大きなリスクと困難を伴うことを、
私たち日本人は覚悟しなければならないのかもしれません。

岐路に立つ中国―超大国を待つ7つの壁

岐路に立つ中国―超大国を待つ7つの壁