しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

出口に向かえるか?

今月4日の日経新聞「経済教室」は、
池尾和人・慶応大学教授の
アベノミクスの1年㊦〜金融緩和の効果、限定的』でした。

この論考で池尾教授は、
日本銀行が量的・質的金融緩和の波及ルートとして指摘してきたのは、
次の3つであると説明されています。

第1は、イールドカーブ(利回り曲線)全体の押し下げを図ることを通じるもの。
すなわち、短期金利のみならず、中長期の金利についても引き下げることで、
景気を刺激する効果があるというもの。

第2の波及ルートは、ポートフォリオ・リバランス効果と呼ばれるもの。
従来よりも満期までの残存期間の長い長期国債を大量に買い上げることで、
民間金融機関にポートフォリオの見直し(リバランス)を促すこと。
長期国債の代わりに準備預金を保有しても収益性が劣ることから、
民間金融機関はよりリスクをとった資産運用に向かわざるを得ない。

第3の波及ルートは、期待への働きかけ。
名目金利の低下余地が乏しい中で、
インフレ期待を高めることで実質金利を低下させようという取り組み。

詳しい説明は省略しますが、池尾教授は、
「これらの波及ルートは大きな実績につながっているとはみられず、
今回の緩和の金融政策としての効果は限定的だといわざるを得ないけれども、
財政出動と同時に実施されており、客観的には、
その実際の役割は財政政策の支援になっているといえる」と指摘されています。

確かに、円安に伴う輸入インフレの懸念などで
短期のインフレ期待はやや高まっているとみられるものの、
「持続的な物価上昇につながる中長期のインフレ期待が
有意に高まってきているという証拠は乏しいままである」との説明は、
このところの日銀審議委員の講演内容を踏まえると、非常に説得力があります。

そして、池尾教授は、論考の最後を、次のように締めくくられています。

『財政ファイナンス的な政策運営を続けていても、
金融緩和が必要であり続けている間は、弊害は顕在化しにくい。
問題は、金融緩和の必要性がなくなった時点である。
そのときに同時に財政健全化の目処(めど)がついていないと、
金融政策は円滑に出口に向かうことはできず、
金利急騰かインフレ高進かを余儀なくされるリスクが危惧される。』

う〜ん、なるほど。そういうものなのか……。
金融政策が出口に向かうことができるのか、ちょっと心配になってきました。