しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

業績をたたえる風土を!

今月20日の日経新聞「経済教室」は、
稲継裕昭・早稲田大学教授の『公務員制度改革の論点㊦〜官僚の専門性が重要』でした。

まず、稲継教授は、一連の公務員制度改革の動きには、いくつかの背景となる動きがあり、
それらが複雑に絡み合って、累次の法案や対案に影響しているため、
一般の国民には改革の意味するところがわかりづらいと述べられています。

背景となる動きとして、具体的には次の4つを挙げられています。
 第1として、マスコミ、世論を中心とした官僚バッシングの流れ。
 第2に、政治側がイニシアチブをとって進めた01年の省庁再編に続く改革として、
 そこで働く公務員のシステム変革の動き。
 第3に、新自由主義経済学を背景に民間企業並みの能力実績主義を目指す議論、
 さらには公務員の手厚い身分保障を奪おうという主張。
 第4に、労働組合サイドからの要請として、終戦時以来、
 公務員に認められてこなかった労働基本権(協約締結権、さらにスト権)回復の要請。

そして、第1の背景から公務員倫理法制定や天下り規制の法改正の要請、
第2の流れから内閣人事局の設置、第3の議論から能力実績主義の法制化と
人事評価制度の本格実施が生まれてきたけれども、
今回の法案で労働基本権の問題は先送りになったと説明されています。

稲継教授の御指摘のとおり、3度も法案が廃案となって、
しかも上記のような動きが複雑に絡んでいるとなると、
一般の国民に改革の意味が分かりづらいのも無理のないことだと思われます。

ところで、この論考の中で、私が思わず首肯したのが、人材確保の問題です。
稲継教授は、次のような観点でこの問題を解説されています。
『今回の法案以外にも、公務員制度改革の課題はさまざまにあげられ、
 今回の法案が成立して改革が終わりということにはならない。
 特に人材確保の問題は深刻だ。
 今では優秀な学生が国家公務員総合職よりも外資系を目指す場合も多い。
 滅私奉公という言葉が死語になりつつある現代において、
 待遇の問題を抜きにして有能な若者をリクルートするのは事実上困難だろう。
  〜(中略)〜
 一時期の公務員バッシングによって、
 多くの有能な若き官僚のモチベーションが損なわれ、公務部門を去る者も多かった。
 素晴らしい業績を上げた公務員をたたえる風土も必要ではないか。』

何回もこの日記で書いていますが、国家公務員、地方公務員を問わず、
その存在を新自由主義的な「コストの観点」だけで評価・判断することは
絶対にやめてほしいと願っています。