岩田規久男・日銀副総裁が、
今月6日に宮崎市で講演された内容が、日銀HPで公表されています。
この講演録を読んで勉強になったことが二点ありました。
一つ目は、現在、日本銀行が実施している「量的・質的金融緩和」は、
将来のインフレについての人々の予想に働きかけることによって、
その効果を発揮することを一つの眼目としているということです。
この点について、岩田副総裁は、次のように解説されています。
『金融政策に限らず、どんな経済政策も人々の予想形成に影響しないものはありません。
それは、人間は将来を予想しながら、現在の行動を決めるからです。
したがって、人々の予想を考慮に入れながら政策を運営するということは、
とても大切なことです。
また、経済現象に関係する予想については、
「予想が結果として自己実現する」という面も重要です。
例えば、多くの人が「この会社の株式の価格は上がる」と予想して
その株式を購入すれば、実際にその会社の株価が上昇するといったように、
「予想の自己実現化」は現実の世界に大きな影響を及ぼすのです。』
う〜ん、そんなものなのかな…?
この解説を読んでも、岩田副総裁ご自身が言われているように、
人々の予想に働きかけることを前面に出した金融政策は
過去にあまり例のない試みであり、
『どことなく曖昧で、頼りない印象を受ける』感じは否めません。
なんだか、「金の切れ目が縁の切れ目」のように、
人々の予想が期待外れになると、一気にその政策効果を失うような気がしてなりません。
二つ目は、日銀がマネタリーベースを増やしても、
金融機関の貸出残高が増加するには時間がかかるということです。
この点については、岩田総裁は、次のように解説されています。
『デフレが続くと、中小企業を含めた多くの企業が現預金の保有を増やし、
資金余剰主体になります。
実際、15年近いデフレが続く中で、企業は設備投資を抑制して、現預金を積み上げてきました。
その結果、企業の現預金保有残高は約230兆円と、
GDPの50%近くにまで達しています。
このため、デフレからの脱却が始まってからしばらくの間は、
運転資金や設備投資のための資金が手持ちの現預金でまかなわれるほか、
好転した企業のキャッシュフローが借入金の返済にあてられるため、
金融機関の貸出は必ずしも増加しません。
貸出が本格的に増え始めるのは、
内部留保では在庫投資や設備投資の資金をまかないきれなくなってからです。
また、デフレからの脱却過程では、株価が大きく上昇する一方、金利先高観が生まれるため、
銀行から比較的短期の資金を借りるよりも、増資や起債などにより、
資本市場から長期の資金を調達する方が有利であると判断する企業が増えてきます。
このことも、デフレからの脱却が始まってからしばらくの間は貸出が増加しにくい理由です。』
はぃ…、こちらはなんとか理解できました。
でも、『デフレからの脱却が始まってからしばらくの間』の「しばらくの間」とは、
どれくらいの「期間」を指すのでしょう?
この「しばらくの間」に、様々なリスクに遭遇したら一体どうなるのでしょう?
私のように心配性で弱気な人間(よく言えば、リスク回避的)がいるので、
日本経済はデフレから脱却するのが難しいのかもしれません。