しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

不確実性と自己冷却効果

今月3日から14日までの間、
日経新聞『身近な疑問を読み解く やさしい経済学』において、
小塩隆士・一橋大学教授の『第5章 リスクと期待』が連載されました。

分かりやすい解説で、とても勉強になりましたが、
この連載のなかでも、第8回目の「不確実性が支える需要」が印象に残っています。

リスク回避的な私たちは、不確実な状況をできるだけ避けたいと思い、
保険をはじめとする様々な仕組みを考案してきましたが、
この世の中には、不確実性が需要を支えているものがあると小塩教授は説明されます。

ん…? 一瞬、何のことかと思いましたが、それは教育だそうです。
小塩教授は、このことを次のように順序立てて解説されています。

 ①自分の子供の頭がどこまでよいか、幼い頃にはなかなかわからない。
  この段階では子供の学力については不確実なところがかなりある。
  親は子供の可能性に期待して、子供を塾に通わせる。

 ②小学校高学年、中学校と進むにつれて、だんだんと子供の成績がはっきりしてくる。
  学年も上がり、子供に何度もテストを受けさせることによって、次第に学力を見極めていく。

 ③子供の学力をめぐる不確実性が薄れてくると、教育に対する需要に変化が出てくる。
  子供の学力が高くないことがはっきりしてきた親は、次第に教育にお金をかけなくなる。
  教育にお金をかけ続ける親は、自分の子供は頭が良さそうだとわかってきた親、
  あるいはまだ不確実性が残っている親に絞られる。

う〜ん、そういうことだったのか。
ということは、私は娘の「不確実性」を信じて、長く教育に投資してきたことになります。
ですが、小塩教授の次の言葉には、思わず絶句してしまいました。

『教育に対する需要は、子供の学力をめぐる不確実性によって支えられていきます。
 この不確実性は、「夢」あるいは「勘違い」と名づけたほうがよいかもしれません。』

この言葉には参りました。娘には失礼だけれど、やはり私の「勘違い」だったのかも…。
さらに、小塩教授の解説は続きます。

『学力をめぐる不確実性は教育を受けるほど弱まっていくことを考えると、
 教育には自分で自分に対する需要を冷やしていく面があります。
 これを教育需要の「自己冷却効果」と呼ぶこともできます。』

もっと早く「自己冷却効果」という言葉を知っておけば良かった……です。