しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

正しく恐れる

今月7日の日経新聞「経済教室」は、
アーサー・ウォルドロン・ペンシルベニア大学教授の
『日米中関係の行方㊦〜米国との同盟、過信は禁物』でした。

この論考を読んで、背筋が寒くなりました。
ウォルドロン教授の論旨を、紙面掲載の「ポイント」を参考にしてまとめると、
おおむね次のようになります。

中国軍の活動が宮古島の北方の海域に焦点を合わせているのは
 中国が太平洋への確かな出口を必要としているためだ。

・日本は中国の脅威に対応するため、自衛隊の能力を増強するとともに、
 同盟国である米国が日本に不足している軍事力を提供することを期待している。

・現在の日本の備えが有効性を保てるのは10年。
 中国はその間に軍備増強を続け、同じ10年間に米国の軍事力は着実に弱まる。

・中国は脅威であり、米国が抑止力を提供するというのは神話で、
 ミサイル防衛システムだけでは十分でない。
 日本が安全を守りたいのであれば、英国やフランス、その他の国が保有するような
 最小限の核抑止力を含む包括的かつ独立した軍事力を開発すべきだ。

背筋が寒くなったのは、
『日本は、最小限の核抑止力を含む包括的かつ独立した軍事力を開発すべきだ。』
という記述です。

「包括的かつ独立した軍事力の開発」とは、
一体全体どのようなイメージを想像すればよいのでしょう?
集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更でさえ、
各界各層に、反対意見や慎重意見があるというのに…。

でも、そうは言っても、ウォルドロン教授の次の指摘は、とても重みがあります。

『米国は日本との間に安全保障条約を締結しており、
 これまでは同条約を完全に順守してきた。
 それにもかかわらず、ワシントンでは
 日本より中国の方が重要だと考える勢力が影響力を増している。
 日中間の武力衝突が起こった場合、米政府が中立的な立場をとるのではなく、
 日本を本気で支援するより、中国との妥協を迫って、
 尖閣諸島の領有権を放棄するよう日本に促すのではないかと懸念される。』

う〜ん、確かに想定されるシナリオではありますよね。
そして、この懸念にさらに追い打ちをかけるのが次の記述です。

『対抗する軍事力がなく、信頼できる同盟国もない日本が、将来のいつかの時点で、
 日本より大きく、核兵器を保有する侵略国との紛争に直面する可能性がある。
 日本にとってそれは悪夢以外の何物でもない。』

核兵器を保有する侵略国との紛争や巨大地震の襲来などなど……。
日本に将来起きるであろう事態を考えると、夜も寝られなくなりそうです。
「正しく恐れる」のは、容易ではありません。