今月15日から17日まで3日間、
日経新聞「経済教室」に「揺らぐ国際秩序」というタイトルの論考が掲載されました。
有識者のそれぞれ論考の中で、特に印象に残った記述を、
いつものように、この日記をメモ代わりにして残しておこうと思います。
○田中均・日本総合研究所国際戦略研究所理事長〜「日米、戦略対応練り直せ」
『Gゼロ時代を本質的に特徴づけているのは、異なるベクトルを持つ2つの要素である。
1つはグローバリゼーションの結果、
各国の相互依存関係が圧倒的に深化したことである。
もう1つは国内課題への関心がナショナリズムの高揚と政治のポピュリズム的傾向に
つながっていることである。
相互依存関係の深化は各国が相争うことへの歯止めになると考えられるが、
ナショナリズムの高揚は各国の自己主張の強まりとなる。
ウクライナ問題ではこの2つの要素が顕在化している。』
『一部では「冷戦の復活」が語られているようだ。
しかし現在の世界は冷戦時代と比べて桁違いに深い相互依存関係に組み込まれている。
これは良いニュースでもあり、悪いニュースでもある。
最善のシナリオは各国指導者が対立のもたらす損害に気づいて一方的な行動を控え、
交渉で物事を解決する手段に合意する「平和解決シナリオ」である。
最悪のシナリオは事態が冷戦にとどまらず「熱戦」、
まさに第1次大戦のような事態に陥ることである。
その場合、核兵器が存在しなかった第1次大戦を上回る災厄になる可能性が存在する。
東西間の「新冷戦」ないし「再冷戦」は両者の中間である。
冷戦時代に愛された核抑止の論理が働く可能性はあるが、
確率は3つのシナリオのなかで最も低いだろう。』
○添谷芳秀・慶応義塾大学教授〜「中ロ軸「地政学ゲーム」再び」
『欧米諸国に軍事力で原状復帰を試みる選択肢は存在しない。
対抗策はロシア資産の凍結などの経済制裁と
主要8カ国(G8)からの排除などの政治的手段に限られる。
孤立したロシアが国際社会での米国の様々な外交努力に抵抗し、
サボタージュする場面が増えるかもしれない。
さらに、ロシア自身が欧米に対する経済的報復に出れば、
経済相互依存のシステムは深く傷つく。
その結果、有効な手が打てない米国の国際的リーダーシップが
さらに失墜する可能性もある。』
これらに付け加えると、中西教授は、
2014年という年はすでに転換の年として歴史に記憶されつつあるとし、
第1次世界大戦の開戦100周年であると同時に、
ベルリンの壁崩壊後25周年でもある今年、
世界は冷戦終結後で最も緊張した情勢を迎えていると指摘されています。
それぞれの論考を読んで、国際情勢がいかに揺らいでいるかが理解できました。
歴史を振り返ると、昭和14年8月、
ドイツがソビエトと独ソ不可侵条約を締結したことに衝撃を受けた平沼首相は
「欧州情勢は複雑怪奇」との言葉を残されています。
この言葉は、現在の国際情勢にも当てはまる気がします。