6月の「100分de名著」は、柳田国男の「遠野物語」でした。
番組を視聴するとともに、石井正己・東京学芸大学教授が書かれた
NHKテレビテキストを読了しました。
「遠野物語」は、ザシキワラシやカッパ、神隠し、姥捨てなど、
岩手県遠野に伝わる伝承を記録した著作とのこと。
石井先生ご自身が、
「私がもっとも好きな話の一つ」とテキストに書かれているように、
私も、臨死体験というか、瀬戸際で魂が戻ってきたという、
「九七話」の話が強く印象に残っています。
逆縁で先に亡くなった息子から、
『トッチャお前も来たか』といわれ、
『お前はここに居たのか』といいつつ近づこうとすると、
『今来てはいけない』と制止された男の人。
結局、この男の人は、死なずに蘇生します。
「生と死を超えた父と子の再会は哀切で、感動的とさえいえる。」
石井先生は、このように書かれたうえで、次のように解説されています。
『ここには魂の感覚というものがとてもよく描かれています。
ふだん生活しているごく身近な場所に死の空間があるのですが、
それはたんに物理的に近いというだけでなく、精神的にも近いのでしょう。
時には生と死の境界そのものが曖昧になることもあります。』
神への畏怖と感謝、祖霊への思いなど、
日本人の死生観や自然観が凝縮された「遠野物語」。
そこには、確かに、現代人が忘れかけている、
「日本人の心の原点」があるような気がします。
テキストを読んだことを契機に、柳田国男の原書も読んでみようと思います。
柳田国男『遠野物語』 2014年6月 (100分 de 名著)
- 作者: 石井正己
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2014/05/24
- メディア: ムック
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