しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

生に対する肯定

『別冊100分de名著 「幸せ」について考えよう』を読了しました。
この本は、四つの異なる分野の名著から、「幸せ」について考える構成となっています。

その四つの分野の名著と解説者は、次のとおりです。
 ・文学の章
  井原西鶴『好色一代男』『好色一代女』〜島田雅彦
 ・経済学の章
  アダム・スミス国富論』〜浜矩子
 ・哲学の章
  ヘーゲル精神現象学』〜西研
 ・心理学の章
  フロイト精神分析入門』〜鈴木晶

そして、それぞれ著者が考える「幸せ」を私なりに抜き出すと、次のようになります。
 ・島田雅彦
  考え方の転換点は、長い人生の要所要所で個々人に訪れます。
  何かをいちど断念し、それで考え方を変えて、次に向かう。
  ため息が深呼吸に変わる、その瞬間。
  私が「幸せ」と考える「断念のあとの悟り」とは、そういうものです。
 
 ・浜矩子
  人の痛みがわかるというのは、それだけ賢くなるということです。
  それだけ想像力が豊かになるということです。人と親しくなれるということです。
  そのような精神風土の中で育まれる経済活動こそ、人を幸せにする経済活動です。
  それこそが、経済活動の本来の姿です。
 
 ・西研
  他人からは不幸な人生と思われても、その人が自分の人生を振り返るときに、
  「あれこれいろんなことがあって絶望したこともあったけど、
  こんないいこともあったし、自分としてかけがえのない出会いもあったから、
  自分の人生これでよしとしよう」と心から思えれば、
  それは幸福といってもよいのではないでしょうか。
  「幸せとは、自分の生に対する肯定である。」
  これが、ぼく個人が考える「幸せ」の定義です。

 ・鈴木晶
  私が「幸せとは何か」と尋ねられたら、こう答えます。
  「愛する人が幸せでいること」である。
  美味しい料理を作って幸せそうに食べてくれる相手をみると、
  自分も幸せになれますよね。
  相手が困っているときに手をさしのべて、
  感謝されると自分もうれしくなってくるものです。
  小さいことかもしれませんが、そうしたことの積み重ねこそが、
  人間の本当の「幸せ」だと思うのです。

いずれも素晴らしい「幸せ」の定義だと思いますが、
このなかでも私の一番のお気に入りは、西研(にし・けん)さんの
「幸せとは、自分の生に対する肯定である。」という言葉です。
この名言に出会っただけでも、この本を読んだ価値がありました。

また、島田雅彦さんが「心理学の章」の「割り込みコラム」で述べられた
『人間とって幸福とは何かと問うとき、快感を得る幸福だけでなく、
 少なくとも不幸ではないという幸福のかたちが確かにあることは、
 忘れてはならないと思います。』という言葉も印象に残っています。

三連休で一気に読んでしまった本でした。