しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

違うものは違う

『なぜローカル経済から日本は甦るのか〜GとLの経済戦略』
(冨山和彦著:PHP新書)を読了しました。

いくつも印象に残る記述がありました。例えば次のようなものです。

『従来は、グローバル経済圏で規制緩和をして生産効率を上げても、
 結果的にグローバル経済圏とローカル経済圏の格差が広がってしまうだけだった。
 グローバル経済圏の労働者が賃金上昇を享受し、IT企業家が繁栄を謳歌する一方で、
 ローカル経済圏の労働者は
 「どうして私たちは幸せになれないのだろうか」と考え込んだ。
 つまり、富裕層が豊かになり、その富がやがて貧困層にまで行き渡るという
 「トリクルダウン理論」はおこらなかったのである。』

『私は、メセナで女性を増やせ、
 職歴や国籍の多様性を増やせと言っているわけではない。
 同質的な集団は、必ず意思決定能力が低下する。
 その場の「空気」でものが決まってしまうので、
 ムラの空気の調和を保つためには、
 絶対に勝てないとわかっていても戦争をはじめてしまう。
 グローバル経済圏における意思決定のクオリティを高めるためには、
 ダイバーシティが必要になる。
 意思決定のレイヤーに多様性を持たせることが重要なのだ。』

『ローカル経済圏では、生産性の高低やサービス内容の善し悪しによって、
 必ずしも競争原理が働くわけではないのだ。
 したがって、生産性の低い企業やサービス内容の悪い企業が
 必ずしも淘汰されるわけではない。』

『ローカル経済圏の雇用は、もともと流動性が高い。
 「Lの世界」はサービス産業と中小企業の世界なのだ。
 そこに終身雇用・年功制・企業内組合という、
 J・アベグレン博士の言う「日本型雇用の三種の神器」など、
 過去においても確立したことはない。』

う〜ん、なるほど…。
確かに、ごもっとものような気がします。

「違うものは違う」
著者は、GとLの経済圏の直接的な関連性も希薄になっているとして、
このように述べられています。

大規模な経済対策を講じても、
なぜ「トリクルダウン」は起こらなかったのか……。
以前からの疑問点に答えてくれたほか、
GとLのそれぞれの特性を把握することの大切さが理解できた、
とても収穫の多い本でした。

なぜローカル経済から日本は甦るのか (PHP新書)

なぜローカル経済から日本は甦るのか (PHP新書)