しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

現代史の良書に出合う

歴史認識とは何か』(細谷雄一著:新潮選書)を読了しました。

 

著者は、本書の目的を

イデオロギー的な束縛」、「時間的な束縛」、

そして「空間的な束縛」という三つの束縛から戦後史を解放して、

よりひろい器の中に「戦後史」を位置づけし直すことだと述べられています。

 

そして、戦前の日本が陥った問題は、

平和主義に背いて軍国主義の道を歩んだことだけでなはく、

国際主義的な精神が欠落して、

国際情勢を適切に認識できなくなっていったことが

より致命的だったこと。

 

また、戦前の日本が、軍国主義という名前の孤立主義に陥ったとすれば、

戦後の日本はむしろ平和主義という名前の孤立主義

陥っているというべきではないか、と指摘されています。

 

う~む、とても鋭い御指摘です。

このように、本書には印象に残る記述がたくさんあるのですが、

なかでも「圧巻」は、著者が本書の最後に書かれた

次の格調高い文章ではないかと思います。

多くの人に読んでもらいたいので、

少々長くなりますが、引用させていただきます。

 

『他方で、現代に至っても日本を取り巻く国際環境は厳しく、

 また孤立主義の誘惑は強力である。

 他国を批判して、国際社会の不正義を罵り、

 また圧倒的な世界大国であるアメリカを軽蔑して

 日米協調の精神を拒絶することは、つねに多くの日本人を魅了してきた。

 

 しかしながら、そのような安易で破滅的な選択肢を

 われわれは拒絶しなければならない。

 自らの正義を絶対視して他国の価値を嗤い、

 国際社会における正義や規範を無力であると突き放し、

 自らの価値を絶対的で自明な正義として語ることは、

 戦前の日本が国際社会から孤立して破滅したときに歩んだ道程と

 同じものではないか。

 

 どれだけ苦しくても、どれだけ困難であっても、

 他者に語りかけ、他者の理解を求めて、

 他者の抱く価値を尊重することから、

 日本が進むべき国際主義の道は始まるのだろう。』

 

日本のこれまでの歩みを理解し、これからの進むべき道を考える上で、

本書は必読の書籍ではないでしょうか…。

多くのことを学ぶことができて、本書に出合えたことに感謝しています。