今月6日のこの日記で、
『生きて帰ってきた男~ある日本兵の戦争と戦後』
この読み応えのある本の感想を、
今日の日経新聞「春秋」では、
「逆らいがたい社会の変化のなかで懸命に生きる姿に、
読後、人間の偉大さへの感動を覚える。」と簡潔明瞭に書かれていました。
同じ読後の感想文でも、
コラムニストの文章は、「洗練されているなぁ…」と羨ましく思います。
そして、この本が、小林秀雄賞に決まったことも紹介されていました。
コラムニストと感想が一緒だったのは、
私が一番心に刻まれた文章を、次のように採り上げていたことです。
『~(略)~謙二(著者の父)さんは、
人生の苦しい局面で最も大事なことについて、答えた。
「希望だ。それがあれば、人間は生きていける」』
ところで、実は、コラムの本題は、
今週は、21世紀初めの世界や日本の転換点となり得る出来事が
相次ぐということでした。
その一つは、米連邦公開市場委員会(FOMC)が、
2008年末からのゼロ金利の解除をするかどうかで、
株価や新興国通貨への影響も取り沙汰されているそうです。
もう一つは安保関連法案の参院での行方で、
一定要件の下で集団的自衛権の行使に道を開くということです。
これらの出来事と、小熊さんの著書を結びつけたコラムは、
ちょっと強引なような気もしますが、
おそらくその意図は、次の文章に表れているのだと思います。
国や人々の運命を大きく変える可能性があるだけに、
多くの負託に応えた、熟慮の上での判断を待つほかない。
とはいえ、結末いかんに関わらず、
やがて、思わぬ荒波に世がもまれるのは歴史の常。』
この文章の後に、先ほどの「希望だ。……」が続きます。
思わぬ荒波にもまれても、小熊さんのお父さんのように、
希望を失わずに生きていこう、というメッセージと受け止めました。