しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

日本人とは何か。自らは誰か。

『東京プリズン』(赤坂真理著:河出文庫)を読了しました。

 

ヘラジカ」、「ヘラジカの子の耳」、「ベトナムの結合双生児」、

「大君」、「過去のマリと現在のマリ」……。

 

これらが何を意味するのかさっぱり分からなくて、

途中、何度も投げ出しそうになりましたが、

我慢強く「最終章」まで読むことができてホットしています。

この「最終章」は、とても読み応えがありました。

 

言うまでもなく、この本の主題は「天皇の戦争責任」です。

その「天皇とは何か」について書かれた、次の文章が忘れられません。

 

『私は今、崩れゆく氷の上に立ち、沈みゆくような気持がしている。

 そして知った気がする。

 天皇の何たるかを問うたなら、

 自分の立つ場所がなくなる感覚に襲われるだろうと。

 

 そしてこれが、私の国の大人が天皇を語ってはいけないことにして

 それを決して問わなかった理由であった気がする。

 

 「天皇が日本の象徴である」と口にするのは簡単なのだが、

 その意味を私たちの誰も本当には実感しておらず、

 本当にそれを問うたら、日本とは何かを問わなければならない。

 自らは誰かと、答えなければならない。

 

 そして自分は誰でどこから来て、日本人とは何かを、私は答えられない。

 ただ、日本人に生まれついたというだけだ。

 そしてそのことを誇れるように私は育てられなかった。決して、誰にも。』

 

ただ、主人公マリの母に対する「殺意」は何だったのか、

最後の最後まで私には理解できませんでした。

この本は、「司馬遼太郎賞」、「毎日出版文化賞」、「紫式部文学賞」を

受賞していますが、一般読者の評価は、真っ二つに分かれるような気がします。

なにせ、最後まで読み通すのには、一種の「苦痛」を伴いますから……。

 

東京プリズン (河出文庫)

東京プリズン (河出文庫)