今月25日の「溜池通信」の特集記事は、
『安保法制成立後のアベノミクス論』という時宜を得たタイトルで、
読んでいてとても勉強になるレポートでした。
このレポートで「かんべえさん」は、
アベノミクスが抱える根源的な矛盾を指摘されています。
「かんべえさん」によると、
日本の4-6 月期の実額ベースの GDPは528.4 兆円で、
アベノミクスが 始まった2013 年1-3 月期の524 兆円から見て、
ほとんど変わっていないとのことでした。
「この誤算がどこにあったか」について、次のように述べられていました。
少々長くなりますが、重要な記述だと思うので、そのまま引用させていただきます。
『確かにアベノミクスは円安・株高をもたらして企 業業績を改善した。
ところが企業収益が、賃上げや設備投資には向かっていない。
だ から個人消費は伸びないし、自律的な景気回復には至らない。
企業経営者のマインド はなおも慎重だ。
おそらく少子・高齢化による国内市場の縮小や、
将来に予想される 国民負担の増加といった中長期の課題を
シリアスに受け止めているからだろう。
この辺り、政府の思惑とはすれ違いがある。
アベノミクスは「まずデフレからの脱却を」と考える。
ところが「期待に働きかける」政策を採っていると、
どうしても近視眼的にならざるを得ない。
端的に言えば、「財政再建よりも経済成長を優先する」 ことになる。
ところが長いデフレに慣れている企業家の心理は、
それを見ていて「い つかは政府財政が破綻して、
国民生活や企業経営にも災厄が降りかかる」という悲観論に傾いてしまう。
財政の持続性などという大きな問題は、
本来、企業経営者が心配してどうなる話ではない。
気にしない方がいいのであるが、
こんな調子ではアニマル・スピリッツを発揮するどころの騒ぎではない。
賃上げも、政府の機嫌を損ねない程度にやっておこう、 ということになってしまう。
かくして政府が「短期楽観」を強調すればするほど、
民 間が「長期悲観」に傾いてしまうというのは、
アベノミクスが抱えている根本的な矛盾と言えるのではないだろうか。』
う~む、なるほど…。政府の「短期楽観」と民間の「長期悲観」は、
とても「言い得て妙」だと思いました。
そのうえで、「かんべえさん」は、
これからの日本経済をどう運営していくべきかについて、
いくつかのアイデアを提示されています。
曰く、「通貨危機に要注意 」、「 補正予算の編成を」
「個人消費に優しい税制を」、「貿易自由化の促進」、「 モノからサービスへ 」…。
詳しくは原文を参照いただくとして、
「安全保障関連法案」を「戦争法案」だとして、
対案を示さなかった民主党はじめ野党各党も、「かんべえさん」のように
アベノミクスに代わる日本経済運営の対案を是非提示していただいて、
「建設的な論戦」を政府・与党に挑んでほしいものです。(嫌味ですけど…)