消費税軽減税率の問題点や課題について、
今月5日の日経新聞「経済教室」に掲載された
諸冨徹・京大教授の『消費税軽減税率の視点㊦~税額票の導入が不可欠』
という論考が、分かりやすく整理されていて、大変勉強になりました。
いつものように、この日記をメモ代わりにして整理しておきます。
まず、軽減税率の問題については、
①軽減税率は全員に適用され、
消費額の大きい高所得者により大きな恩恵をもたらすため、
逆進性の緩和効果が小さい。
②軽減税率対象品目と、それ以外の品目の線引きが困難で複雑である
③軽減税率の執行のために、事業者に多大の事務費用が発生する
④一律税率の場合に比べ税収ロスが発生する
一方で、こうした問題は発生しないと考えられてきた給付措置にも
次のような執行面での問題がある。
①給付措置の実施には、
課税最低限以下の所得層の所得を正確に把握する必要があるが、
往々にして困難を伴う
②給付を受けるためには本人が必要書類を取りそろえて申請し、
審査と決定通知を受けなければならないが、
一般に、申請主義を採用すると、申請率が低くなる
軽減税率の採用にあたり、インボイス(税額票)制度を必ず導入する必要がある。
そのメリットとしては、
①複数税率のもとでも、取引ごとに適用税率を明記し、税額を算出するので、
正確な税額計算が可能になる
②もしこの税額計算に誤りがあれば、取引業者の税額計算にも影響が及ぶので、
正確な税額計算がなされているか、
業者間で相互チェックする「けん制機能」が働く
③これらのメリットから、事業者間で消費税額が正確に転嫁されるようになる
諸冨教授によると、
これまで多くの経済学者・財政学者が軽減税率導入を批判し、
低所得者に所得の多寡に応じて給付する「給付付き税額控除」などの
給付措置で対応すべきだ指摘してきたそうです。
私には、どちらの政策が良いのか悪いのかよく分かりませんが、
軽減税率の対象を広げすぎると減収額は多大なものとなり、
何のための消費税増税なのか、結果的に本末転倒になると思います。
「消費税増税分は社会保障給付に還元することで、その充実と持続可能性を図る」
という「社会保障と税の一体改革」の本旨に反することだけは、
絶対に避けてほしいものです。