金星探査機「あかつき」が、
金星を回る軌道への投入に成功したというニュースに接し、
「再チャレンジの意義」というか、
「努力はいつか報われる」という、浪花節のような感動に浸りながら、
今日はこの日記を書いています。
さて、今月7日の日経新聞「核心」に掲載された
芹川洋一・論説委員長の『止められるか近代の逆走~テロ・中国で揺らぐ世界』
というタイトルの論評は、とても格調の高い内容でした。
まず、芹川委員長は、現在の世界を考えるため、
英国の外交官であるロバート・クーパーが提唱した、
世界を三区分する「モダンの線」を引用し、
線上のどこらにいるかで今が見えてくると述べられています。
その3つに分かれる世界とは、次のような内容でした。
第1は、権力がばらばらで、
国の体をなしていない混沌とした「プレモダン」(前近代)の世界。
第2は、国民国家による「モダン」(近代)の世界。
安全を保障するものは軍事力と考えられ、そこでは国境線の変更も可能。
国の主権が何より優先するのも特徴。
第3は、国の主権よりも人権、軍事力よりも相互信頼が尊重され、
国という枠組みを超えていく「ポストモダン」(脱近代)の世界。
欧州連合(EU)がいちばん進んだ例。
これらは、前近代から近代へ、
そして脱近代へと世界が進んでいくのが望ましいとの考え方で、
「国という枠を乗りこえていく先に
新しい世界が開けてくるという意味を含んでいる」という解説でした。
ところが、このクーパー流の「ポスト近代論」は、
残念ながら、どうにも一本調子では進んでいなくて、
「むしろ逆走しているのが現在の姿ではないだろうか」と、
ISによるとされるパリ同時テロやロシアによるウクライナ介入、
さらには、南シナ海での中国の行動などの事例を例示して、
芹川委員長は問題提起をされています。
そして、芹川委員長は、
「ポスト近代国家は再近代化し、近代国家は近代秩序からはみ出そうとし、
プレ近代は国際秩序そのものを否定するという常態」を
ニューモダン(新しい近代)と名づけてもいいのではないか、と述べられています。
いやぁ~、読んでいて、考えさせられる内容が盛りだくさんでした。
特に、一本の補助線を引いて、今の立ち位置を見るという考え方は、
大変勉強になりました。
「近代の逆走」をとどめる方策を、果たして世界は見つけることができるのか?
これからの世界の動向がとても気になるところです。
(最近、地球儀が無性に欲しくなりました……。)