しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

究極のメツセージ

『子どもの貧困連鎖』(保坂渉・池谷孝司著:新潮文庫)を読了しました。

 深く考えさせられる本でした。
子どもの貧困の、あまりにも重くてつらい現実に、

読んでいる途中、何度もため息が出ました。

 

本のなかで印象に残ったのは、
著者の「主張」や「解説」よりも、関係者の「会話」や「証言」でした。
その一言一言に、とても大事な「メッセージ」が込められていると感じたからです。

たとえば、次のようなものです。

 

・夜間定時制高校生の陽子

 『高校に入って、学ぶことの大切さをすごく実感しました。

  人が人として暮らすための最初の大切な過程だと思います。

  どんな人も平等に学べる、

  お金がなくても誰もが学校に行ける社会にしたいんです。』

 

・陽子が通う定時制高校の生徒指導担当の藤井

 『子どもには成長、発達のための学びが必要で、本来働かなくてもいい。

  このごく普通の生活ができず、

  学費を本人が働いて払わざるを得ないのが現代の貧困だ。』

 

・公立小学校養護教諭の河野

 『教育と福祉のはざまに落ちる子どもが、保健室でSOSを出している。

  気づいて援助していくことが、子どもや家族の自立支援につながる。』

 『貧困のために大事な子ども時代を奪ってはならない。』

 

・保育園園長の鈴木

 『保護者のみなさん良かったね、子どもが保育園に入れて。

  困ったことはいっぱい出てきます。

  でも私たちも、どんな応援ができるのか、

  いつもみなさんと一緒に考えていこうと思っています。

  子どもたちも親が仕事をしているから預けられた、そういう場所じゃなく、

  親が仕事をしていたからこんなに楽しい毎日があった、

  そういう保育園の生活を子どもたちにさせたいと思っています』

 

最後に、この本の最後の「解説」にあった、次の言葉も書き残しておきます。

この言葉が、この本の究極のメツセージに代わるものではないかと、

私は思っています。

「未来への投資」を、これまで私たちが怠ってきたツケが、

今の人口減少社会の一つの要因のような気がしてなりません…。

 

『意欲や能力があっても、

 あらかじめ上に行けないと決まっている社会は、人間の力を奪う。

 日本の社会は、子どもたちの投資へを避けることによって、

 自分自身の首を緩やかに締めているのかもしれない。』

 

子どもの貧困連鎖 (新潮文庫)

子どもの貧困連鎖 (新潮文庫)