『子どもの貧困連鎖』(保坂渉・池谷孝司著:新潮文庫)を読了しました。
深く考えさせられる本でした。
子どもの貧困の、あまりにも重くてつらい現実に、
読んでいる途中、何度もため息が出ました。
本のなかで印象に残ったのは、
著者の「主張」や「解説」よりも、関係者の「会話」や「証言」でした。
その一言一言に、とても大事な「メッセージ」が込められていると感じたからです。
たとえば、次のようなものです。
・夜間定時制高校生の陽子
『高校に入って、学ぶことの大切さをすごく実感しました。
人が人として暮らすための最初の大切な過程だと思います。
どんな人も平等に学べる、
お金がなくても誰もが学校に行ける社会にしたいんです。』
・陽子が通う定時制高校の生徒指導担当の藤井
『子どもには成長、発達のための学びが必要で、本来働かなくてもいい。
このごく普通の生活ができず、
学費を本人が働いて払わざるを得ないのが現代の貧困だ。』
・公立小学校養護教諭の河野
『教育と福祉のはざまに落ちる子どもが、保健室でSOSを出している。
気づいて援助していくことが、子どもや家族の自立支援につながる。』
『貧困のために大事な子ども時代を奪ってはならない。』
・保育園園長の鈴木
『保護者のみなさん良かったね、子どもが保育園に入れて。
困ったことはいっぱい出てきます。
でも私たちも、どんな応援ができるのか、
いつもみなさんと一緒に考えていこうと思っています。
子どもたちも親が仕事をしているから預けられた、そういう場所じゃなく、
親が仕事をしていたからこんなに楽しい毎日があった、
そういう保育園の生活を子どもたちにさせたいと思っています』
最後に、この本の最後の「解説」にあった、次の言葉も書き残しておきます。
この言葉が、この本の究極のメツセージに代わるものではないかと、
私は思っています。
「未来への投資」を、これまで私たちが怠ってきたツケが、
今の人口減少社会の一つの要因のような気がしてなりません…。
『意欲や能力があっても、
あらかじめ上に行けないと決まっている社会は、人間の力を奪う。
日本の社会は、子どもたちの投資へを避けることによって、
自分自身の首を緩やかに締めているのかもしれない。』