しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

不安な影の正体

今日6日になって、
昨年12月30日の産経新聞「正論」に、
佐伯啓思京都大学大学院教授が『アベノミクス脅かす不安な「影」』という論評を
投稿されていることに気がつきました。

この論評で佐伯教授は、アベノミクスに対する危惧は、
主として次の二つの点に向けられていると述べられています。

そのひとつは、景気回復に対するアベノミクスの有効性について
確証が持てないという点、
もうひとつは、アベノミクスが所得格差や地域格差を生み出し、
社会的平等を損なうのではないかという点です。

そして、この危惧は、
今日のグローバル市場競争が根本的に大きな矛盾をはらみ、
それを解決する手段を持っていないということを踏まえれば、
「決して根拠のないものとはいえない」と述べられています。

ここでいう矛盾を私なりに要約すると、次のようになりますが、
「この相異なった課題に対する処方がアベノミクスの三本の矢であった」と、
佐伯教授は述べられています。

「政府がグローバル市場競争で優位に立とうとすると
 市場中心的な政策をとらざるを得ないが、
 市場競争の強化が行き過ぎると、所得格差や雇用の不安定化、デフレ化を招き、
 政治はどうしても不安定化することになるので、
 他方で、市場経済を安定させて、雇用を確保する政策をとることになる。」

佐伯教授は、アベノミクスの背後には、
中国の成長力の低下、ロシア通貨危機の発生など「巨大な影」、
原油価格の不安定化やイスラム国の動向など「不気味な影」が忍び寄っており、
『われわれにとってより本質的な問題は、景気動向への一喜一憂よりも、
グローバル経済のもつ根本的な不安定性にあることを忘れてはならない。』
と論評の最後を、警告的な文章で締めくくられています。

アベノミクス」というか、
「日本経済再生戦略」の影に潜む、根本的な課題について考えさせられた論評でした。
大変勉強になりました。

ところで、佐伯教授といえば、
年明けから『学問の力』(ちくま文庫)という本を読み始めたところです。
読書感想文を、またこの日記にいずれ書くことにします。