今月29日の日経新聞「経済教室」は、
森信茂樹・中央大学教授の
『税制改正 積み残しの課題㊥〜消費税 益税解消へ対策を』でした。
今回は、私なりに論考のポイントを整理してみました。
・わが国の基幹税である消費税法には、様々な問題が内在しており、
このままで17年4月に10%へと引き上げられれば、
わが国の消費税は国際標準から外れ、「ガラパゴス化」する。
・免税事業者数が500万を超えるなかで税率が10%に上がれば、
益税の規模が膨らみ、消費税制度の信頼を揺るがす問題になるが、
この問題はインボイス(税額票)制度の導入で解決できる。
・「インボイスは手間がかかる」と反対が多いが、これは誤解である。
インボイスは申告税額の計算を確実・容易にするために考え出されたツールであり、
事業者は売り上げと仕入れにかかる消費税額をインボイスを用いて合計し、
前者から後者を差し引く、足し算と引き算だけで納税額を計算できる。
手間がかかるのは軽減税率であって、インボイスではない。
・軽減税率には、財源のほかに次のような問題がある。
第一に、政策効果である。
軽減税率は絶対額で食料支出額が多い高所得者に受益額が多く、低所得者対策とは言い難い。
第二に、何を軽減税率の対象にするか百家争鳴の議論になる。
業界の利権がからみ、制度も複雑になる。
食料支出かレストランサービスかを巡って外食サービスの取り扱いが大きな問題になる。
これらはすべて事業者・消費者・税務当局、つまり国民の負担増となる。
・軽減税率に代わる給付付き税額控除とは、
「低所得者の基礎的な食料支出にかかる消費税額相当額を現金給付する制度」であり、
カナダで導入されている。
低所得層に限定した措置なので、政策効果は高く、
社会保障と税の共通番号(マイナンバー)制度の実施が16年1月なので、
17年の消費税率引き上げには十分間に合う。
益税の拡大や非効率な軽減税率の導入など、
我が国の消費税制度が、このままだと国際標準から外れ、
「ガラパゴス化」するかもしれないことや、
マイマンバー制度の必要性が、論考を読んでよく分かりました。
いずれにしても、消費税は「奥が深い」(?)税なのですね…。