『批判理論入門〜「フランケンシュタイン」解剖講義』
(廣野由美子著:中公新書)を読了しました。
メアリ・シェリーの「フランケンシュタイン」を読んだことを契機に、
この本を購入しました。
著者の廣野教授は、「小説とは何かという問題について論じるにあたって、
ただひとつの材料を選ぶとすれば、やはりこれほどの材料はない」と書かれています。
その理由は、およそ次のようなものでした。
・だれもがタイトルを知っていて、それについてのイメージを持っていること。
・言語を媒体とした小説という形式でなければ表現できない作品であること。
・作品の内側に目を向けると、
語りの方法やプロット構成をはじめ、すぐれた技巧が凝らされていること、
豊かな間テキスト性を秘めていること。
さて、この本を読んで、様々な批評方法があることを知りました。
そのなかでも「透明な批評」とは、
作品世界と読者の世界との間に仕切りが存在しないかのように、
テクストのなかに入り込んで論じる方法であるとのことでした。
このような読み方があるとは、私は全く気がつかなかったのですが、
「フランケンシュタイン」に関する透明な批評の具体例として、
廣野教授は次の二つの事例を示されています。
・作品ではほんのわずかしか登場しない
ヴィクター・フランケンシュタインの弟・アーネストはどこへ行ったのか?
・フランケンシュタインが死んだあと、
イギリスに戻ったォルトンはどうしただろうか?
この事例につい廣野教授は、次のように解説されていしまた。
・アーネストは、次に怪物に殺されるのは自分ではないかと不安になり、
家にとどまっているのは危険だと感じ、
手っ取り早く、遠い国の軍隊に入ったのではないか。
・また、ウォルトンについては、
フランケンシュタインの最期を看取った者の責任として、
遺族であるアーネストに連絡を取ろうとしたが、
それは容易ではなかったのではないか。
このように、「いったん虚構と現実の仕切りを取り払って
小説世界のなかに入ってゆくと、
疑問は際限なく生じてくる」と指摘されています。
いゃあ〜、この本は大変勉強になりました。
これから小説を読む際には、
もう少し思考を巡らせながら読みたいと思います。
批評理論入門―『フランケンシュタイン』解剖講義 (中公新書)
- 作者: 廣野由美子
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2005/03
- メディア: 新書
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