しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

BIと国家の役割

ベーシック・インカム』(原田 泰著:中公新書)を読了しました。

すべての人に基礎的な所得を給付する
ベーシック・インカム=BIについて書かれた本です。

著者は、金融緩和に積極的なリフレ派の論客であり、
今年3月26日からは日銀審議委員に就任されている方なので、
どんな内容を書かれているのか興味があったので、購入することにしました。

さて著者は、BIに対して考えられる反論を、次のように整理されています。

 ①貧困は単にお金のないことではなく、
  教育、職業能力、社会適応能力の不足、家庭内暴力、児童虐待、疾病、傷害
  などの問題であり、現に、その面から対処しなければならない事例が多数ある。

 ②BIで得られる所得は不十分なものであり、
  それは人々を貧困から救い、健康で文化的な最低限の生活を保障するものでない。

 ③貧困は人々の努力、相互の助け合いで解消するべきもので、
  国家の一方的な恩恵によって解消されるべきものではない。
  国家が登場すれば、それは家族や地域の相互扶助、労使による保険制度、
  労働者の団結による救済など、人々の助け合う力を弱めてしまう。

これらの反論に対して、著者は本書において明確な答えを用意されていますが、
それでも私は、未だに半信半疑な気持ちが残っています。
特に、反論②に対する反論は難しいような気がして…。

著者自らが述べられているように、
「富に限度がある以上、いかなる福祉制度も財政的な制約がある」としたら、
やはりBIも決して万能薬ではないのではないか、と思うからです。

一方で、例えば、貧しい人が生活保護にアクセスできないという問題は、
BIが最も有効に解決してくれるような気もします。

「国家の役割」について改めて考えさせられる、そんな本でした。