しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

円安と輸出企業の視点

アベノミクス3本の矢のうち、第1の矢の大胆な金融緩和は、
 円安を通して経済を変えたが、その限界が露呈しつつある。
 第2の矢の機動的な財政運営は、もはや機能を停止している。
 3本の矢を標榜する時期は過ぎた。』

今日29日の日経新聞「経済教室」、
『円安と日本経済㊤〜持続的成長につながらず』で、
小峰隆夫・法政大学教授は、このように述べられていました。

アベノミクスの当初の段階で、デフレからの脱却の兆しが表れ、
企業収益が大幅に改善するなど目覚ましい効果が表れたのは
もっぱら円安によるものといえそうだけれども、
第2段階である14年度に入ってくると、
円安による経済改善効果には限界が表れ始めたとのことで、
小峰教授はその「限界の露呈」について、次の3点を指摘されています。

第1は、第1段階で表れた円安の効果は
「円安が進行している時」に表れる短期的な効果ばかりであること。
円安で物価上昇率を持続または引き上げるとか、
輸出製造業が円建て価格上昇効果で収益を増やし続けるには、
円安が進行し続けねばならないこと。

第2は、円安は持続的な成長にはつながらないし、
消費者にとってはむしろマイナスであることが分かってきたこと。

円安の過程で輸出製造業が輸出数量を増やす道を選択しなかったのは、
「国内で生産して輸出して稼ぐ」という事業モデルを捨てつつあるからで、
そうなると、企業は円安で稼いでも、
国内の生産設備増強のための設備投資はしないし、正規社員の雇用を増やしたり、
人材確保のために賃金を大幅に引き上げたりすることもしないから、
持続的成長にはつながらないこと。

また、円安による輸入物価の上昇は実質所得の減少をもたらすから、
生活者にはマイナスとなること。
もともと円安は輸出企業にはプラスだが、
消費者としての家計が利益を得ることはないこと。
日本では何となく、円安を歓迎し、
円高を「困ったこと」として扱う癖がついているが、これは日本人全員が、
輸出企業の視点で為替レートの変動を評価しているからであること。

第3は、14年度には円安がむしろ原油価格下落の
プラス効果を打ち消してしまったこと。

う〜ん、なるほど……そうだったのか。
どうやら私たち日本人は、いつのまにか「円安歓迎・円高迷惑」という
「輸出企業の視点」にマインドコントロールされていたようです。

小峰教授の論考を読んで、円安の恩恵が私のような庶民には
ほとんど及ばないことがよく理解できました。