しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

古きよき日本への哀惜

NHKテレビテキストの
『100分de名著〜日本の面影・小泉八雲』を読了しました。
テキストの著者は、早稲田大学教授の池田雅之さんです。

『日本の面影』は、
八雲が日本にやってきて最初に上梓した、日本についての紀行文です。

池田教授は、テキストの「はじめに」において、
今回、よく知られた『怪談』ではなく『日本の面影』を取り上げた、
その一つの理由として、この作品を通して、
日本文化と日本人の生き方についてもう一度問い直してみるということ。

『日本の面影』には、ここ百二十年ほどで
日本が失ってきたものが克明に書き留められている、
それは、近代化の波に飲み込まれる直前の、慎ましくも誠実な庶民の生活ぶり、
美しい自然、暮らしの中に生きる信仰心。
……このように述べられています。

実際に、テキストを読んでみて、
来日から、わずか一年と七か月の間に、
日本と日本人の本質を的確に理解し、
それを美しい文章で表現したという「業績」に、ただただ感心しました。

また、池田教授は、八雲という存在が
現代の私たちにどんな意味を投げかけているかについて、
「オープン・マインド」という言葉で解説されています。

具体的には、八雲には、
次の三つのオープン・マインドがあったと述べられています。
 ・自分の五感を解き放つ
 ・他者に対して温かな眼差しを持つ
 ・他者への共感・共鳴

一方で、温かな家族に恵まれなかった幼児期のトラウマなどが
「怪談」などの作品に色濃く反映されているのではないかという御指摘も、
八雲という人物を理解するうえで大変参考になりました。

日本人以上に「古きよき日本」を理解していた人がいたのですね…。
また一つ、勉強させていただきました。

小泉八雲『日本の面影』 2015年7月 (100分de名著)

小泉八雲『日本の面影』 2015年7月 (100分de名著)