今日から官公庁は仕事始めです。私は今朝、午前4時前に目が覚めました。
もう一寝入りすると遅刻してしまいそうなので、
そのまま寝床でウトウトしていました。小心者は困ったものです…。
それはさておき、この日記も久しぶりに「固め」の話題にしたいと思います。
昨日3日の日経新聞「日曜に考える~時論」は、
岩井克人・国際基督教大学客員教授の『国際通貨と資本主義の未来』でした。
本当は、記事のすべてをこの日記に書き残したいところなのですが、
そういう訳にもいかないので、勉強になった記述を、
少々長くなりますが、以下に整理しておきたいと思います。
・国際通貨の議論が混乱しているのは、
基軸通貨と強い通貨とが混同されてきたからだ。
円も人民元もユーロも強い通貨である。
強い通貨とは、一国の経済力を背景として、
その国との貿易や資本取引で使われる通貨のことだ。
・2008年のリーマン・ショックの時、中国はドルの覇権に異議を唱え、
人民元の基軸通貨化を目指してきた。だが、強い通貨と基軸通貨とを混同している。
いくら一国の経済規模が大きくなっても、
その通貨がそのまま基軸通貨になるわけではない。
・基軸通貨は何らかのビッグバンがなければ生まれない。
米経済は19世紀後半から最強だったが、基軸通貨国は長らく英国だった。
第2次大戦という大きなショックが、ようやくドルを基軸通貨に押し上げた。
・欧州連合は米国の覇権に対抗するという政治的な狙いから生まれた。
だが、落とし子のユーロは経済的な矛盾を抱え込んでいる。
共通通貨とは労働の移動を前提としているからだ。
共通通貨の下では、失業した労働者が
労働不足のドイツなどに移住しないと不均衡は調整できない。
・アイデアはあるがお金のない人と、
お金はあるがアイデアがない人を結びつけるのが金融だ。
だがデフレは負債の実質額を膨らます。
それはアイデアのある若者を苦しめ、イノベーションの活力を損なう。
戦後、デフレがこれだけ長く続いた国はなく、失われた20年はその結果でもある。
・2%のインフレ目標は今実行可能な唯一の短期的マクロ政策だ。
名目金利がゼロのとき、財政政策は有効だが現在の財政では制約がある。
予想インフレ率を上げて実質金利をマイナスにすれば、
資産効果と金利効果で消費と投資が刺激される。教科書通りのケインズ政策である。
・日本では、バブル崩壊の苦しみを経て、
やっと「ポスト産業資本主義」の段階に入った。
企業は新技術や新製品など、他との「差異」によって利潤を得るようになったのだ。
中国の資本主義がポスト産業資本主義に移行するには、
まさに一党独裁が障害となる。法の支配が不確定であると、
自らイノベーションをするより政治と結託したほうが利益となるからだ。
・危機状態におけるマクロ政策の中に倫理観を直接持ち込むのは賢明ではない。
90年代、日本の住宅金融専門会社への公的資金の導入を巡って、
バブルを引き起こした張本人を救済するとは何事だという議論が横行し、
処理が遅れ、失われた20年を招いた。
・社外取締役の義務化といった外形的な統制制度を整備しても限界がある。
会社のガバナンスは究極的に、経営者、
さらには従業員の倫理性によって支えられているからである。
このほか、記事のなかでは、
『現代の資本主義を批判するにせよ、それを変える方策を見つけるにせよ、
主流派経済学(新古典派経済学)を身に付け、
自由放任主義の論理がどう組み立てられているのかを理解しないと
自由放任主義がなぜうまくいかないのかも理解できない』
という記述も強く印象に残りました。
理論経済学者で、思想家・言論人としても影響力を持つ岩井教授は、
「経済学を知れば今の経済の動きがわかるようになる」と
経済学を学ぶ意義と楽しさを説かれているそうです。
また、昨年末には、
日経新聞の「エコノミストが選ぶ経済図書ベスト10」の第1位に、
岩井教授の著書『経済学の宇宙』(日本経済新聞出版社)が選ばれていました。
今回の記事を読んで、この本も読みたくなってきました。
積読本がまた一冊増えそうです。