『そもそも現代日本で、精いっぱい働いても、
子どもに十分に食べさせてあげられない労働者がいるという現実を
どう受け止めればよいのか。
義務教育はすべての子どもに、自立するための最低限の教育を保障するはずなのに、
なぜ日本の公教育は九九ができない中学生を生み出しているのか。』
この問い掛けをされているのは、阿部彩・首都大学東京教授です。
昨年12月29日の日経新聞「経済教室」に、
『貧困の連鎖止められるか㊦~公教育の立て直しが急務』という論考を
投稿されていました。
阿部教授は、貧困対策として、まず、若者の3割が非正規雇用という
「労働問題」に取り組む必要があると述べられています。
次に、もう一つ必要なのが公教育の立て直しだとして、
義務教育段階で、すべての子どもが中学3年までに身につけるべき学力を
確実に習得できるように徹底するべきだと述べられています。
さらに、「貧困の連鎖」の危険性が最も高いのが高校中退層であるとして、
政府は子どもの貧困指標として「高校進学率」を用いているが、
着目すべきなのは「高校卒業率」であると指摘されています。
『いったん学校を離れてしまうと、
この年齢層の子どもたちは未成年であるにもかかわらず、
政策の網から抜け落ちてしまう。』という御指摘には説得力があると思いました。
そして、この論考の最後で阿部教授は、
『正社員のイス取り競争を子どもたちに強要して、
学童期から上へ上へと駆り立てるのではなく、
地元の公立校に通い普通の子ども期を過ごせば、
将来の貧困リスクから十分に身を守ることができる。
そうした社会が実現してこそ、
社会の上の層の人々も下の層の人々も安心して子を産み、
育てることができるのではないだろうか。』と課題を提起されていました。
阿部教授が言われている
「自分だけ、自分の家族だけ守ろう」という「マインド」から抜け出すのは、
今の社会状況を考えると、なかなか容易ではないように私には思われますが、
公教育の充実強化は、社会全体で是非実現していきたいものです。
さて、話は変わりますが、
今日5日の東京株式市場で、日経平均株価は続落しました。
その一つの要因が、中東の地政学リスクだといわれています。
今年も、国の内外ともに、心配の種は尽きることがありません…。