日経新聞「経済教室」では、
今月4日から、「分断危機を超えて」の連載が始まりました。
第1回目は、吉川洋・東京大学教授の『格差拡大、価値創造奪う』でした。
この論考で吉川教授は、
いつの時代、どこの国でも、度を越した格差は、
社会にとって極めて危険な毒薬であり、現代の格差を考えるには、
過去の歴史を振り返ることから始めなければならない、と述べられています。
また、日本では、戦後の財閥解体、農地改革、インフレーションで平等化が進み、
50年代半ばからの高度経済成長を経て、
70年ごろには「1億総中流」というフレーズが誕生したけれども、
80年代以降、高齢化の進行や非正規労働者の増大などにより
経済格差が拡大した結果、「1億総中流社会」が崩壊した、との解説がありました。
では、格差の拡大を止め、問題を解決するには、何が必要か。
吉川教授は、「防波堤」である社会保障制度を持続可能なものとすることや、
教育の機会均等を確保することは不可欠だけれども、
いわゆる「再分配政策」だけでは十分でないとして、
具体的に次の点を指摘されています。
・超高齢社会で多くの高齢者が安心して暮らすには、
お金を再分配するだけでなく、医療、介護、住宅、交通、流通など
広範な分野で新しいシステムが必要であること。
・一方、働く現役世代の格差を縮小するために何よりも必要なのは、
持続的な経済成長であること。
・そして、先進国経済の成長にとって最も重要なのは、
人が行う「イノベーション」であること。
う~む、なるほど…。とても分かりやすい解説です。
いつもの「イノベーション」という言葉が登場するなど、「吉川節」が全開です。
論考の最後も、吉川教授らしい、次の言葉で締めくくられていました。
『拡大する格差の下で働く人々の心が落ち着きを失えば、
社会全体として、新しい価値を創造する力は衰弱する。
格差は、分配上の公正という観点から問題であるだけでなく、
日本経済の将来にとっても大敵なのである。』
まさに「恒産なき者は恒心なし」の世界なのですね…。納得しました。
ところで今週は、世界は「激動の一週間」でしたし、
私自身も長い連休明けで、普段のペースを取り戻すのに精一杯の一週間でした。
明日からは3連休なので、正直ほっとしています。
来週からの「日常」に備えて、鋭気を養うことにします。