3年が経過したアベノミクスの評価について、今月10日の愛媛新聞に、
愛媛県宇和島市出身の河野龍太郎・BNPパリバ証券チーフエコリミストが、
「低成長の本当の理由」というタイトルの論評を寄稿されていました。
河野さんは、アベノミクスによって、円安株高が進行したけれども、
日本経済はほとんど成長せず、輸出数量は全く増えていないとして、
次のように述べられています。
『円安による利益率向上で輸出企業の業績は確かに改善したが、
輸出数量が増えていないため生産量も増えず、家計の所得はあまり増えなかった。
一方、円安による輸入物価上昇で、食料品などの値段が上昇し、
実質購買力が損なわれた家計は消費を抑え気味だ。
生産量が増えていないから、企業は設備投資もあまり増やしてない。
つまり、経済のパイがほとんど膨らんでいない中で、
円安によって、家計から輸出企業に所得の移転が生じただけだった。』
潜在成長率が0%近くまで低下しているとし、
需要不足が14年当初にほぼ解消されていることから、
経済の好循環につながらず、成長が滞ったままの原因は、
もはや需要不足ではなく供給側にあると指摘されるとともに、
成長率の向上には潜在成長率そのものを引き上げる必要があると指摘されています。
ところが、昨日12日の日経新聞「日経FT共同特集」で
FTチーフ・エコノミクス・コメンテイターのマーティン・ウルフさんは、
日本の潜在成長率が低いことは河野さんの見解と一致しているものの、
問題は供給ではなく(仮にあるとしても根本は労働力の減少)、民間需要の弱さにあり、
すなわち民間投資に対する民間貯蓄の超過だと指摘されています。
う~む、お二人の論評を読んで、訳が分からなくなりました。
私には、どちらも正しいことを指摘されているように思われます。
このどちらかを問題の核心として認識するかによって、
解決方法は異なってくるのでしょうか?
どちらにしても、アベノミクスの当初の狙い、
すなわち「積極的な日銀の金融緩和で円安に誘導すれば、
輸出数量や生産量が増えて、輸出企業の業績改善だけでなく、
雇用増で家計の所得も増え、経済全体が潤う」という狙いを、
見誤ったことだけは確かなのではないかと、
お二人の論評を読んでネガティブに考えた次第です。これって、デフレマインド??