猛烈な寒波の影響で強い西風が吹き、こちらも厳しい寒さとなっています。
我が家のメダカを飼っている火鉢には、今朝から厚い氷が張ったままになっています。
報道によると、西日本に襲来する40年ぶりともされる大寒波は、
「ポーラー・ボルテックス」・「極渦(きょくうず))」という
北極の上空にできる巨大な気流の渦が源だそうです。
極端に寒さに弱い私は、この寒波が通り過ぎるのをただじっと待つだけです。
さて、『羅生門・鼻』(芥川龍之介著:新潮文庫)を読了しました。
この本には、全部で8編の短編歴史小説が掲載されています。
まず驚くのは、「今昔物語」に素材を求めた「羅生門」と「鼻」が、
芥川龍之介が学生時代に書かれているという事実です。
平安時代に書かれた書物を、まるで国文学者のように読解し、
そこで得た材料を巧みに作品に反映させるという手法は、
なかなか真似できることではないと思いました。
私が8つの作品のなかで気に入ったのは、「芋粥」でしょうか…。
人間の夢や欲望というのは、実現するまでが「華」であって、
いざ実現してしまうと、一気にその魅力が失せてしまうということが、
次の文章を読んで理解できました。
『人間は、時として、充たされるか、充たされないか、
わからない欲望の為に、一生を捧げてしまう。
その愚を哂(わら)う者は、畢竟(ひっきょう)、人生に対する路傍の人に過ぎない。』
あと、「邪宗門」も面白かったのに、
途中で物語が終わってしまっていたのがとても残念に思います。
誰か続きを創作してくれる人はいないものでしょうか…?
「唯ぼんやりとした不安」という言葉を残して自殺した芥川龍之介…。
本の最後にあった「芥川龍之介 人と文学」のなかの次の解説は、
芥川文学の特質を見事に表現していると思いました。
『母親の発狂と言う悲劇は、幼くして乳房に別れた胎内体験の欠如とともに、
心象の闇にふかく沈んだ原体験として、
資質としてのペシミズムやニヒリズムを育て、
また、生い立ちの秘密を隠そうとする禁忌の感覚は、
実生活の告白をこばむ虚構性を芥川文学の本質として決定することになった。』
これからも、その洗練された知的な文体を味わってみたいと思います。