しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

鎮魂の物語

『桶川ストーカー殺人事件~遺言』(清水潔著:新潮文庫)を読了しました。

 

最初から最後まで、やりきれない思いで読みました。

著者が執念の取材を続けなければ、この事件は迷宮入りしたかもしれないし、

警察の驚くような不祥事も発覚しなかったのではないかと思うと、

心底、背筋が寒くなりました。

 

また、この本を読むと、

「マスコミが社会で果たす役割とは何か」について考えさせられます。

具体的には、被害者の娘さんのお父さんが、

「文庫化に寄せて」において次のように述べられいて、

とても重みのある言葉だと感じ入った次第です。

 

『マスコミは、しっかりと、正確に、世に真実を報道していく事ができるのか。

 細部に至るまで詳しく伝える責任とはどういうものなのか。

 限られた紙面、制約のある時間のなかで、

 どんなメディアであれ限界があることはわかっているつもりだが、

 それぞれのメディアの特徴を生かすことで、

 それぞれの役割を十分に果たして欲しい、というのが私の切なる望みでもある。』

 

この本は、「事件ノンフィクション」であると同時に、

無念の死を遂げた一人の女子大生への「鎮魂の物語」でもあると思います。

 

桶川ストーカー殺人事件―遺言 (新潮文庫)

桶川ストーカー殺人事件―遺言 (新潮文庫)