しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

オレンジ色の物語

『さよなら、オレンジ』(岩城けい著:ちくま文庫)を読了しました。

 

160ページ余りの短い小説でしたが、中身はとても濃い本でした。

この本では、「ハリネズミ」と呼ばる日本人女性が、

恩師のジョーンズ先生に宛てた手紙のなかにに、いくつか心に残る言葉がありました。

例えば、次のような……。

 

『ひとつのことを成し遂げる人には、三つのPが揃っていると思いませんか。

 Patience、Perseverance and Passion. 

 そして、自分が心から好きなことを職業にできる人は、

 なんて幸運な人たちでしょうか。』

『言葉とは、異郷に住む限り、

 その主要な役目は自分を護る手段であり、武器です。武器なしには戦えません。

 けれど、それよりも先に表現することをやめられないのは、

 なにかを伝え、つながりたいという人間の本能でしょうか。』

『いつも最初に間違った場所で失敗をして、

 そこからしか本来の居場所にたどり着けないのが私という不器用な人間です。』

『私たちが自分の母語を最も信頼するのは、

 その文化や思想をあるがままに表すことができるからです。

 第一言語への絶対的な信頼なしに、二番目の言葉を養うことはできません。』

『人はだれも歳を重ねるごとに、

 こうやって何かを贖(あがな)いながら生きるのでしょう。

 そして、そのきこえない声に耳を傾けることができる人間でありたいと思うのは、

 私自身も歳をとったせいでしょうか。』

『けれども、深い悲しみのあとには、

 生きることへの強い願望と希望がその人の心の中に必ず訪れることを、

 私はこの大切な友達とふたりの娘たちから教わりました。』

 

異国の地で懸命に生きるアフリカ人女性と日本人女性。

この二人の主人公を描いた本書は、人間の「再生」と「希望」の物語だと思います。

太陽は地球上のどこにいても、朝焼けも夕焼けも、

うつくしく、すがすがしい「オレンジ色」を私たちに届けてくれるのですね…。

 

 

さようなら、オレンジ (ちくま文庫)

さようなら、オレンジ (ちくま文庫)