「その試合」の「その瞬間」を、私は確かにテレビで観た記憶があります。
「その試合」の「その瞬間」とは、ボクシングのタイトルマッチで、
モハメド・アリがジョージ・フォアマンにKO勝ちを収めた瞬間です。
1974年(昭和49年)10月30日といえば、
私は当時18歳で、京都で浪人生活を送っていました。
でも、どこでテレビを観たっけ…?
三畳一間のS予備校の寮には、もちろんテレビなどありません。
テレビ中継の時間は、夜ではなくお昼だったような記憶があり、
そうすると、予備校の友達と学生向けの食堂でその瞬間を観たのかもしれません。
試合の内容は、アリがロープを常に背にし、防戦一方でした。
「よくもまぁ、あれだけ打たれて倒れずにいるなぁ~」と、
誰が見てもアリの敗戦が濃厚に思えた時、奇跡が起こったのです。
この試合の結果が、その後の私の浪人生活に
勇気と希望を与えてくれたのは言うまでもありません。
元ヘビー級世界王者のモハメド・アリさんが、74歳でお亡くなりになったそうです。
今日の朝日新聞「天声人語」には、追悼のコラムが掲載されていました。
その中に次のような一節がありました。
『ベトナム戦争に反対して徴兵を拒否し、王座を剥奪(はくだつ)された。
人びとが無益に死んでいくのが耐えられなかった、と後に語っている。
「すべての人が考えるべき抵抗だった……
自由とは自分の信念を守ることができるということだ」』
私の記憶の中の英雄が、また一人、この世から去っていきました。(合掌)