しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

11文字に込められた思い

今月25日にNHK解説委員室「時論公論」に掲載された

『若者に広がる過労自殺~命より大切な仕事はない』

というタイトルの解説記事を読んで、深く考えるところがありました。

 

記事によると、仕事に不慣れな若い人たちが

過労自殺に追い込まれるケースが増えているそうで、

具体的には次のように書かれていました。

 

厚生労働省によると20代や30代で、

 過労自殺で労災が認められた件数は、昨年度は未遂を含めて36人いました。

 しかし、これは氷山の一角に過ぎません。

 警察庁の統計では仕事上の問題が原因で自殺した若者は

 去年1年間で955人にのぼっています。

 10年前のおよそ4倍に増えていて、

 過労自殺はさらに多いと考えられているのです。』

 

なぜ若い人たちの間で過労自殺が広がっているのかについては、

弁護士の先生のお話として、次の点を指摘していました。

バブル経済が崩壊した後、企業の多くは人件費を抑えるため正社員を減らし、

 非正規労働者を増やしてきた。

 正社員として採用された新人は即戦力として期待され、

 いきなり重要な仕事を任されるケースが増えている。

・厳しい就職戦線を勝ち抜いて就職した側も、

 期待に応えようと頑張り過ぎてしまう。

 つまり、職場環境が変化する中で若者が犠牲になっている。

 

そして、NHK解説委員は、次のような文章で解説を締めくくられていました。

『社員の健康が損なわれている職場からは、仕事の活力は生まれないと思います。

 命をすり減らしてまで働くことに、どれだけの価値があるのか、

 企業はもとより、社会全体で問い直す必要があります。』

 

はぃ、おっしゃるとおりだと思います。

それよりも何よりも、解説記事を読む中で、思考が立ち尽くしてしまったのは、

大手広告代理店の電通に就職したばかりの娘さんを、

過労自殺で亡くされたお母さんが、無念さをにじませながら語ったとされる

『命より大切な仕事はない』というお言葉です。

文章にすればたったの11文字ですが、ものすごく重みのある言葉です。

そのあまりの重さに、返す言葉もありません。

 

ところで、私の手元には、

『ビジネスで活かす電通鬼十則」』(朝日選書)という本があって、

こちらには、「仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない」、

「大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする」、

「難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある」

などの「勇ましい言葉」が並んでいます。

 

今、改めて読み返すと、何故か人間不在の「むなしい響き」を感じます…。