しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

なくした詩集はいずこに

NHKテキストの100分de名著『中原中也詩集』を読了しました。

番組の指南役は作家の太田治子さんで、

また、番組の第3回、第4回では、ゲストに歌人穂村弘さんが登場されました。

 

高校生から大学生の頃、中也の詩がとても好きでした。

私の結婚披露宴の時には、親友が友人代表スピーチで、

「高校時代、中也が好きな人物であったこと」を、エピソードを交えながら、

出席者の皆さんに紹介してくれました。

親友は、私が中也を愛する、とても繊細な青年であることを言いたかったのか、

それとも、性格や行動に根暗な部分があることを言いたかったのか、

今となっては、その内容を思い出すことができません。

 

数多い中也の詩の中でも私が好きだったのは、「汚れちまった悲しみに」…。

 汚れちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる

 汚れちまった悲しみに 今日も風さえ吹きすぎる

 

番組指南役の太田治子さんは、

この詩の魅力を、テキストで次のように書かれていました。

『中也はこの詩の中で、悲しみの理由を具体的に明かしてはいません。

 そのために、読み手である私たちは、誰かの悲しみを思うと同時に、

 自らが抱える悲しみを投影することができます。

 そんな悲しみの上に、一面を白く包む小雪が降りかかっている。

 そう思うと、冷たいはずの小雪

 なぜか少し温かく感じられはしないでしょうか。

 絶望を歌いながらも心のどこかがポッと温かくなるような、

 ある種の救いが常にあります。そこが中也の詩の大きな魅力です。』

 

う~む、なるほど……。

言われてみると、まことにもってそのとおりだと思います。

ただ、今回、テキストを読了して、残念なことを二つ思い出しました。

その一つは、あれほど大切にしていた文庫版の中也の詩集が、

今は手もとに見当たらないこと。

もう一つは、昨年10月に、山口市湯田温泉に出張に行ったのに、

時間がなくて、中原中也記念館に立ち寄れなかったこと。

 

いつかきっと、若かりし頃の「自分」に出会うため、

記念館を訪れてみたいと思います。

 

中原中也詩集 2017年1月 (100分 de 名著)

中原中也詩集 2017年1月 (100分 de 名著)