NHKテキストの100分de名著『中原中也詩集』を読了しました。
番組の指南役は作家の太田治子さんで、
また、番組の第3回、第4回では、ゲストに歌人の穂村弘さんが登場されました。
高校生から大学生の頃、中也の詩がとても好きでした。
私の結婚披露宴の時には、親友が友人代表スピーチで、
「高校時代、中也が好きな人物であったこと」を、エピソードを交えながら、
出席者の皆さんに紹介してくれました。
親友は、私が中也を愛する、とても繊細な青年であることを言いたかったのか、
それとも、性格や行動に根暗な部分があることを言いたかったのか、
今となっては、その内容を思い出すことができません。
数多い中也の詩の中でも私が好きだったのは、「汚れちまった悲しみに」…。
汚れちまった悲しみに 今日も小雪の降りかかる
汚れちまった悲しみに 今日も風さえ吹きすぎる
番組指南役の太田治子さんは、
この詩の魅力を、テキストで次のように書かれていました。
『中也はこの詩の中で、悲しみの理由を具体的に明かしてはいません。
そのために、読み手である私たちは、誰かの悲しみを思うと同時に、
自らが抱える悲しみを投影することができます。
そんな悲しみの上に、一面を白く包む小雪が降りかかっている。
そう思うと、冷たいはずの小雪が
なぜか少し温かく感じられはしないでしょうか。
絶望を歌いながらも心のどこかがポッと温かくなるような、
ある種の救いが常にあります。そこが中也の詩の大きな魅力です。』
う~む、なるほど……。
言われてみると、まことにもってそのとおりだと思います。
ただ、今回、テキストを読了して、残念なことを二つ思い出しました。
その一つは、あれほど大切にしていた文庫版の中也の詩集が、
今は手もとに見当たらないこと。
もう一つは、昨年10月に、山口市湯田温泉に出張に行ったのに、
時間がなくて、中原中也記念館に立ち寄れなかったこと。
いつかきっと、若かりし頃の「自分」に出会うため、
記念館を訪れてみたいと思います。