昨日のこの日記で、金融緩和の本質が「需要の先食い」であることを書きました。
その件に関し、原田泰・日銀審議委員が、
本年6月29日の 資本市場研究会における『債券市場の機能と金融政策の誤解』
という講演のなかで、
「金融緩和によって生じる低金利は、単に将来の需要を前倒しするだけで、
現在と将来の生産を拡大するものではない」という議論の事例として、
翁邦雄・京都大学教授の、次のような主張を紹介されていました。
『確かにマイナス金利政策で住宅建設を前倒しさせる効果はあるでしょう。
しかし、その効果は、家を来年建てる代わりに
今年建てるように働きかけることにすぎません。
今年に前倒しさせると、その分、来年になると建てたい家の数は減ります。
需要を先食いした分、……来年の自然利子率は低下することになります。
こうなってしまうのは、 金融政策では……
長期的に建てられる家の総数は変えることができないからです。』
この主張に対し、原田審議委員は、次のような反論を述べられていました。
『しかし、私が別の機会でも繰り返し述べているように、
金融政策の効果は、需給ギャップを縮小し、雇用と実質所得を拡大することである。
実質所得が拡大すれば、翁氏の比喩を使わせていただければ、
人口によって建てる家の総数が決まっているとしても、
より広い、より暮らしやすい快適な家を建てるはずである。
すなわち、金融緩和は、単に需要を先食いしているのではなく、
現在と将来の両方の需要を拡大するのである。』
う~む……、どちらが正論なのでしょう??
なお、原田審議委員は、先ほどの講演のなかで、
1930 年代の大恐慌においても金融緩和に反対していたミーゼスの
『ブームの恩恵が払う代償は貧困化である』という言葉を紹介された後で、
ケインズの次のような反論を紹介されていました。
『企業の損失、生産の減少、失業の発生の原因は、
1929 年の春まで続いた高水準の投資にあったのではなく、
この投資が停止したことにこそあり、
高水準の投資の回復以外に景気の回復はありえない、と私は考えています』
ますます、どちらが正論なのか分からなくなりました…。
金融緩和の効果って、需要の拡大という意味では、
設備投資の効果と同じなのでしょうか……??
私の場合、金融政策を初歩から勉強する必要がありそうです。(トホホ…)