しんちゃんの老いじたく日記

昭和30年生まれ。愛媛県伊予郡松前町出身の元地方公務員です。

一瞬の不安を感じる

昨日、そして今日と、強烈な暑さが続いています。

この厳しい暑さで、体力が消耗していくのが、はっきりと自覚できます。

まだ7月……。

この過酷な夏を無事に乗り切れることができるのか、ちょっと心配になってきました。

 

さて、『閉鎖病棟』(帚木蓬生著:新潮文庫)を読了しました。

小説とはいいながら、私にはとても重たい本でした。

ですから、コメントも正直しづらいところがあります。

ただ、この私の気持ちを代弁してくれているような記述を、

作家・逢坂剛さんによる解説のなかの、次のような文章に見つけることができました。

 

『帚木の「閉鎖病棟」は、同じように精神を病むさまざまな人々を描きながら、

 そうした刺激的な小説とまったく対照的な世界を構築、提示する。

 精神科病棟の実態を、患者の立場からこれほど公正に描き切った小説は、

 おそらく初めてだと思う。

 ここで公正というのは、むろん差別的な視点がないことだけでなく、

 わざとらしい無益な同情、憐憫もないことを意味する。

 患者を同じ目の高さから、長所も欠点も含めて

 まさにわたしたちの仲間として描く、毅然とした姿勢をいうのである。

 そこに初めて、理解と共感が生まれる。

 この作品を読んだ読者は、精神科の患者たちがしばしばわたしたち以上に、

 純粋でまともな心の持ち主であることを知り、愕然とするに違いない。

 むしろ、異常なのは自分たちの方であって、

 もしかすると彼らの方が実は正常なのではないか、という気さえするだろう。

 逆にそのような不安を、たとえ一瞬でも感じない人がいるとするならば、

 むしろわたしは不安を覚える。』

 

どうやら私も、「一瞬の不安を感じた」読者の一人のようです……。

さぁ、ようやく陽も傾いてきました。

これから、やぶ蚊に刺されながら、庭木の水やりをすることにします。

 

閉鎖病棟 (新潮文庫)

閉鎖病棟 (新潮文庫)