『アメリカ海兵隊~非営利型組織の自己革新』(野中郁次郎著:中公新書)を読了しました。
「組織論」に関する名言が多くあり、大変勉強になりました。
私なりに、本書の要点と思える3つの記述を、次のとおり選んでみました。
・海兵隊の生成発展を分析して第一に感じることは、この組織の挑戦的な創造力である。
過去の試行錯誤から獲得した経験に依拠するだけではなく、
経験から飛翔してあるべき世界像や自画像を描き、そして組織の使命を問い直し、
それを具現化するさまざまなイノベーションすなわち知識を創造してきた。
このように、単に学習するだけでなく、自らを変革創造し続ける組織を自己革新組織と呼びたい。
・最後に、海兵隊という組織の自己革新のプロセスをまとめてみよう。
組織進化論の「進化とは学習なり」という命題によれば、進化の本質とは、新しい情報や知識の学習である。
組織は、外部環境へ適応するのに有用な情報や知識を選択・淘汰しながら生存していくというのである。
しかしながら、組織の自己革新は学習だけではできない。
学習には、絶えず過剰適応の危険が伴うからである。
環境適応に有用であった知識のみを選択し蓄積していくと、「過去の成功体験への過剰反応」が起こり、
新たな環境変化に適応できなくなるのである。
すなわち自己革新組織は、主体的に新たな知識を創造しながら、
既存の知識を部分的に棄却あるいは再構築して自らの知識体系を革新していくのである。
この意味で知識創造こそが組織の自己革新の本質なのであり、
新しい知の創造なくして組織の自己革新はあり得ないのである。
・すべては変化する。
しかし、組織の存在価値が正義、勇気、自由、愛など人間の普遍の価値に近づけば近づくほど、
その変化の度合いは低いだろう。
普遍の存在価値を堅持しつつ機能的価値を革新し続けるのが、自己革新組織である。
合衆国海兵隊は、そのような組織の一つの原型を示しているように思う。
私の個人的な感想としては、
「第三章 教義の実践~南太平洋方面作戦」(ガダルカナル上陸作戦)と
「第四章 教義の革新~中部太平洋方面作戦」(硫黄島上陸作戦等)が読み応えがありました。
アメリカ合衆国海兵隊という「自己革新組織」の生成発展過程を学ぶことによって、
先の大戦における日本軍という組織の「失敗の本質」が見えてきたように思います。
- 作者: 野中郁次郎
- 出版社/メーカー: 中央公論社
- 発売日: 1995/11/25
- メディア: 新書
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