今日25日の朝日新聞デジタル版「波聞風問(はもんふうもん)」は、
『続く企業不正~「これぐらいなら」させぬには~』というタイトルの記事でした。
この記事では、神戸製鋼所が明らかにしたデータ書き換えなどの不正、
いずれの企業も法令順守、企業統治の重要性は分かっているはずだし、
態勢も整えてきたのに、それでも不正が絶えないのはなぜなのか、
組織の問題点を明らかにすることは当然だが、
関わった個人の心理も分析する必要はないか、‥‥と問題提起をしたうえで、
それには、今年のノーベル経済学賞に選ばれた
リチャード・セイラー・米シカゴ大教授らが研究する行動経済学が有効だと書かれていました。
また、伝統的な経済学では理論が重視されるけれども、
行動経済学では人の経済活動での感情や心理が分析の対象となり、
心理を分析するデータを集めるための実験も欠かせないとのことでした。
そのうえで、ダン・アリエリー・米デューク大教授が示した「不正を促す要因」が、
次のような内容で紹介・解説されていました。
・「自らが不正をしても利益を得るのは他人」
神鋼の不正でも、関わっても直接は自分の利益にはならず、得したのは会社だった。
だから不正に関わっても自らに言い訳ができた。
・「他人の不正を目撃する」
複数の部署、管理職が関わっていたという神鋼に当てはまる。
「上司や同僚もやってた」という思いは道徳心の垣根を下げる。
教授は「人は不正に感染しやすい」とも説く。
・「消耗」
疲れがたまると道徳心が損なわれ、不正に手を染めやすくなるという分析。
神鋼幹部の会見では「納期を守り、生産目標を達成するプレッシャーがあった」という説明があった。
では、どんな対策が有効なのかというと、
「罰則も重要だが、道徳心を呼び起こす工夫、環境も必要」とする大竹文雄・大阪大教授のお話と、
「英国の大学でコーヒー代金を入れる箱の前に目の写真を貼ると、
花の写真を貼っておいたときより、回収漏れが減った」という実験が紹介されていました。
う~む、なるほど‥‥。
企業不祥事の防止対策には、個人の感情や心理を分析する行動経済学が役に立つのですね‥。
なお、記事の最後には次のように書かれいて、この文章が強く印象に残りました。
『ちょっとした誘惑が不正への抵抗を鈍くさせる。人間の弱さだ。
本人は「これぐらいなら」という思いだったとしても、
その小さな弱さの積み重ねが、大きな会社を危うくしている。』
人間がそもそも「心が弱い」存在であることを前提条件としたら、
悲観的な見通しではありますが、企業不祥事を根絶することは、今後も極めて困難なように感じた次第です。