黒田日銀総裁の任期満了まで4カ月余りとなり、
後任人事が動き出し、政策修正も取りざたされるなかで、
今後の政策や次期総裁について、安倍政権の経済ブレーンら4人へインタビューした記事が、
朝日新聞デジタル版に掲載されていました。その内容はおおむね以下のとおりです。
まずは、浜田宏一・米エール大名誉教授の発言です。
・もともとアベノミクスでは、所得を増やしたり失業を少なくしたりするために
物価目標を掲げるべきだと考えた。
失業を少なくできたのだから、物価上昇率2%を実現できていないことで
黒田総裁を責める必要はない。雇用がいいならそれでいいじゃないかというのが私の持論だ。
・米欧が緩和縮小に動く中、低金利を維持していれば円安が進みやすく、
いずれは物価上昇圧力が強まる。
次期総裁の5年間は、デフレにもインフレにも対応できる金融政策が求められ、
そういうかじ取りをできる人が必要だ。
次に、本田悦朗・駐スイス大使の発言です。
・緩和開始から5年近くたって物価上昇率がゼロ%台なのは満足できない。
最大の原因は、2014年春の消費増税で期待をしぼませたことではないか。
何かのショックで景気が後退すればデフレに逆戻りするリスクが大きい。
19年10月の消費増税は時期尚早だが、増税すると決めたなら、
ダメージを最小限に抑えるため全力で物価上昇率2%を実現しないといけない。
財政出動も行って相乗効果も得るのがベストだ。
政府が国債発行を増やすなら、その分を日銀が買えばいい。
今はデフレから完全に脱却するチャンスだ。強力な武器を使わない手はない。
・今の政策の延長で2%を実現するのは難しい。
次期総裁は財政と金融を協調的に運用することに理解のある人が望ましい。
・黒田総裁に対し、デフレを克服できていないという批判もあるが、
企業収益が増え、株価は上がり、失業率も極めて低い水準だ。
もっと前向きに評価すべきだ。私はむしろ同情している。
できることをかなりやったのに、政府の構造改革が不十分だからだ。
総裁を続投して踏ん張ってもらう間に、政府が規制改革を頑張るしかないと思う。
・(総裁に必要なのは)金融への見識や経済理論への理解、
市場や政府とのコミュニケーション能力、それに国際的な人脈だろう。
特に日本では国会での答弁能力も求められるが、
それを備えるのは黒田総裁しか思い浮かばない。ぜひもうひと頑張りしてほしい。
最後に、中原伸之・元日銀審議委員の発言です。
・次期総裁人事では、次の5年間で政府と何にどう取り組むのか、という議論が抜け落ちていないか。
2013年1月の政府と日銀の共同声明を見直すべきだ。
何をやるのか明確にしてから、だれがふさわしいのかを考えるべきだ。
・黒田総裁は約束した物価目標の達成に失敗したのに、なぜ再任という話になるのか理解できない。
長くやるとおごりが出やすい、という権力の法則もある。
今回の人事を機に人心を一新させたほうがいい。
う~む、なるほど‥‥。
私は、金融政策のことはよく分からないので、偉そうなことは言えませんが、
黒田総裁の金融政策だけを責めるのは、「ちょっと酷ではないか?」と思います。
ただ、一方で、組織・人事論的な観点からは、
中原伸之・元日銀審議委員の発言に説得力があるような気がしました。
いずれにしても、これまでとこれからの異次元緩和が国民生活に、
その副作用を含め、どのような影響と結果をもたらすのか、とても気になるところです。